「著名人」の次は「著名企業」騙る詐欺広告 オムロン、ツムラ、象印も被害に 生命を脅かす偽商品も
実際にどのような商品が届くのか。届いた商品の見た目はスマートウォッチのようだが、オムロンのロゴはない。 「商品にロゴがついていないことによって、税関の差し止めを回避するねらいがあるようだ。もし商品にオムロンのロゴがついていたら税関で差し止められるため(商品へのオムロンのロゴの記載)をやらない。一方でウェブサイト(の広告)にだけオムロンの商標を載せるということで、かなり巧みに輸入できるようにしているようだ」(オムロン 法務グループ 北口圭介さん) 3社とも当該の商品とは何ら関係がないとしていて、プラットフォーマーに偽広告の削除要請をしたうえで、公式HPやSNSで偽広告への注意喚起を行っている。
偽広告の出稿主については、何らかの罪に問えるのか? SNS広告の問題などに詳しい、板倉陽一郎弁護士に話を聞いた。 「出稿主はめちゃめちゃ違法だ。勝手に登録商標のロゴを使えば商標法違反、商標登録されていないものでも著作権法違反になることもある。名誉毀損・侮辱など明確に刑事罰であり、疑いようもなく違法だらけだ」 出稿主は国外の企業が多く、法的措置が取りづらいケースもある。 では、この件に関してプラットフォーマー側の責任を問うことはできるのか? 「それ(詐欺広告)が出ていることを認識した上で放置していれば、刑事的にもほう助、共同正犯になる。同じように民事でも認識して放置したということになれば、損害賠償を請求されたり差し止められる」(板倉弁護士) プラットフォーマー側も罪に問われる可能性があるという。 「(プラットフォーマーは広告の出稿主から)お金もらっている。(プラットフォーマーがその広告を)『問題ない』としているため、ほう助や共同正犯は十分成立する」(板倉弁護士) プラットフォーマーの対応には、企業側ももどかしさを感じている。 「プラットフォーマーは出稿された広告によって収入を得ているため『プラットフォームを提供しているだけ』という理論ではなく、広告の出稿を受けるにあたって責任を負っていただきたい」(ツムラ 法務・コンプライアンス部 飛田龍人課長) 偽広告が掲載されたフェイスブックなどの運営元であるメタ社に問い合わせると… 「詐欺広告への対策には大規模な投資を行っている」とした上で、「分析の強化、検出技術の向上、広告の削除およびアカウント停止に重点を置いて取り組んでいる」と回答があった。 また、「広告だけでなくリンク先も審査している」としているが、以前から削除要請を行っているにもかかわらず、3社の偽広告は23日時点でも確認されている。 「(詐欺広告かのチェックを)やっていないのだ。慣れている人であれば一瞬見れば本物か偽物か分かる。『何億件もあるから』などと言っているが偽物か判定するのに1秒もかからない。サボっているだけ、コストをかけたくないだけ」(板倉弁護士) プラットフォーマーに偽広告を削除させるためには、刑事告訴も考えられると板倉弁護士は言う。 「捜査が始まること自体で(プラットフォーマー側の)コストが上がるため『それだったらちゃんと対応したほうがいいかな』となるかもしれない。(偽広告は)一瞬見ればわかる。できないのであれば能力が足りないわけで、そんな商売をしちゃいけない」 偽広告に対するメタ社の対応について日本大学危機管理学部教授/東京工業大学特任教授の西田亮介氏は「一見、様々な対策をとっているようだが、もっぱらグローバルな対応を英語中心に説明しているに過ぎず、日本社会に対する説明としてはまったく不十分だ」と指摘した。 「被害に遭っている日本人の多くは基本的に日本語で書かれたサービスで情報を得ているため、世界の情報、特に英語圏の対策などをいくら英語で発信したところで、日本国内で日本語圏でどのような対策をしてるのかに関しては極めて不透明なままだ。総務省などのヒアリングにも十分に答えていない。対照的に日本企業のなかに『どのような対策をとり、どの程度削除が進んでいるのか』を情報公開しているIT企業がある。これは日本車メーカーだけが、コストをかけて仕様やブレーキの性能を公開して、海外メーカーはそのコストを払っていないのと同じだ。こうした情報公開を求めるような規制は世界的に強まっているが、今後、日本でも強まっていくのではないか」 (『ABEMAヒルズ』より)