カルティエの時計「シェイプこそ魅力」 名品パンテール、タンク…磨き上げた新作
なぜ売れる?高級時計&ジュエリー 人気ブランドに聞く(5)
世界屈指の宝飾ブランドであるカルティエが今、時計業界で一段と存在感を増している。スクエア型の「サントス」、オーバル(楕円)が美しい「ベニュワール」、戦車をモチーフにした「タンク」――。カルティエにはメゾンを代表するコレクションが数多くあり、それらの名品が時代を超えて進化を遂げている。カルティエ インターナショナル マーケティング&コミュニケーションディレクターのアルノー・カレズさんは、カルティエの時計が独特の立ち位置を獲得できた理由は「シェイプのユニークさにある」と明言する。 【写真はこちら】クラッシュ[アン]リミテッド、ベニュワール、サントスも…ひと目でわかるカルティエらしさとは ――近年、カルティエの時計のラインアップ充実には目を見張るものがあります。数多くのエキサイティングな新作も発表してきました。現状をどう評価しますか。 「カルティエの時計ビジネスの状況は現在、極めて好調といえるでしょう。2022年~23年のマーケットシェアは競合他社に比べても順調に拡大しています。グローバルな規模でカルティエの時計を望む消費者がより増えている、ニーズが高まっていると強く感じています」 「カルティエは今、時計市場でシェア2位の立場を確立しています。同時に、この業界で独特のポジションを固めたという自負もあります。カルティエは『シェイプ(形状)』作りを得意とするメゾンだ、と認識されているのです。つまり、形やフォルムこそが我が社の強みなのです」
■他社にないフォルムを手厚く
――確かに昔から形、フォルムの側面で業界をリードしてきた印象が強いですね。第1次世界大戦前に開発された「サントス」は、懐中時計全盛の時代にあえて直線的なデザインを取り入れた、角形ケースが特徴的です。ベゼルのビス留めを隠さず、そのまま装飾にしている点も印象的です。 「スクエアだったり、丸かったり、長方形だったり。競合他社がフォーカスしていないフォルムの時計を手厚くそろえているからこそ、これが強みだと言い切ることができるのです。我々は『Watchmaker of Shape(ウオッチメーカー・オブ・シェイプ)』を自負しています。その名に恥じないよう、毎年様々なフォルムの製品を発表し続けているのです」 ――先進性も際立ちますね。例えば「クラッシュ [アン]リミテッド」ウオッチは、繊細さと強さが共存する独特のモダンなデザインで、女性たちの興味を引きます。 「このコレクションはカルティエスタイルの特徴の1つである幾何学性に富んでいます。回転するビーズ、多角形や文字盤の面取り、ラウンドとスクエアの併用、といった具合です。ピコというスタッズとクル カレ(四角すい)を組み合わせ、キラキラと光を反射させるのも面白いでしょう。我々はサントスやパシャといったヘリテージコレクションなど、アイコニックなラインアップを拡充していくと同時に、クラッシュ [アン]リミテッドのような新しいコレクションの提案にも力を入れていきます」 ――そもそもアイコニックなコレクションを豊富に抱えていることは大きな強みです。 「そう、メゾンの最大の強みは、コレクションがバラエティーに富んでいることです。また、時計とジュエリーの双方を手掛けていること、そして老若男女、どんな世代にも『すてきだ』と思ってもらえる商品力が、我々の優位性だと考えています」 「以前、日本に住んでいた時に、その優位性を強く実感しました。裏を返せば、日本市場は嗜好の多様性が浸透している良い例であるとも言えます。タンクであったり、パシャであったり、様々なフォルムの時計が広く受け入れられ、今日でもその状況は変わっていません。翻ってグローバルでみても、タンクファミリーはやはり非常に強いコレクションとして評価されていますし、サントスやパシャも満遍なく受け入れられています」