『【推しの子】』アイ、『マイホームヒーロー』零花……齋藤飛鳥は“事件巻き込まれ系ヒロイン”になぜ選ばれる?
TVアニメシリーズ第2期終了後、いよいよ11月28日よりPrime Videoで実写版ドラマが放送開始になる『【推しの子】』。本稿では、アイドルグループ「B小町」の不動のセンターで伝説のアイドル・星野アイを演じた、齋藤飛鳥に注目したい。 【写真】推さざるを得ないクオリティの『【推しの子】』星野アイ、1/7フィギュアをさまざまな角度から ドラマ版『【推しの子】』で、”絶対的なアイドル”として君臨し、最期ファンに刺殺されてしまうアイドルを演じた彼女。映画『マイホームヒーロー』では、殺人犯の父を持ち、最終的に警察官となってその父親と対峙する娘役を演じている。彼女が、不運に巻き込まれるヒロイン役に選ばれる理由はどこにあるのか。 ■星野アイそのもの? 乃木坂49に最年少13歳で加入しセンターに 齋藤飛鳥が所属していたアイドルグループ乃木坂46は、2011年8月に応募総数3万8934人の中から選ばれた34人で結成されたアイドルグループだ。斎藤は13歳の時にそのオーディションを勝ち抜き一期生として芸能活動をスタートさせた。そもそも3万人を超える応募者の中から勝ち抜き選ばれたこともすごいが、注目すべきは彼女の漫画さながらのシンデレラストーリーだ。 齋藤飛鳥は当時、AKB48の公式ライバルグループとして結成した乃木坂46に、オーディションで合格し、最年少メンバーとして加入。公式によれば、オーディション合格時の彼女の立ち位置は最後列だったそうだが、そこから毒舌キャラなどが注目を集め15枚目シングル『裸足でSummer』で初のセンターを勝ち取るのだ。 当時最注目されていたアイドルグループに、最年少メンバー、かつシングル表題曲の選抜メンバーではなく「アンダーメンバー」としてアイドルキャリアをスタートしたにも関わらず、そこから5年でセンターを勝ち取ったのだ。彼女はその後、乃木坂46のエースとなってセンター争いの頂点に登り詰め、最後は東京ドーム公演でアイドル活動に終止符を打った。 グループの末っ子が苦労した末、運をも味方につけて最後は「グループの顔」へと上り詰めていくエピソードはまるで漫画さながらで、シンデレラストーリーを体現している。そしてそれは、幼少期の劣悪な環境からB小町のセンター、そして伝説のアイドルへと駆け上がった星野アイのエピソードともリンクするのだ。 ■可憐なルックスと毒舌のギャップ シリアスな作品をポップに魅せる 「4000年に1人の美少女」「神に選ばれし美少女」。整った顔立ちと清純派な雰囲気のルックスを持つ斎藤は、アイドル時代度々こうした呼ばれ方をしていた。しかし、斎藤は『推しの子』アイ役では、東京ドーム公演当日にファンに刺殺され、『マイホームヒーロー』では、父親に半グレの彼氏を殺され自身も知らぬ間に事件に巻き込まれたり、最終的には殺人犯の父親と警察官として対峙したりというクセの強い役を演じている。 こうした背景にあるのは、彼女の正統派美少女のルックスと、彼女をトップアイドルに押し上げた“毒舌キャラ”や、インタビューなどで垣間見えるクールなリアリストぶりに大きなギャップがあるからだ。 実際、実写版『【推しの子】』のワールドプレミアに登場した斎藤は、本作のオファーをやりたくないという理由で一度断った旨を取材で公にしていた。大人の事情なども加味すると、オファーを断った理由を濁し説明を回避することもできただろう。しかし、「マスコミの皆さんには少しPOPに書いてほしい」と断りを入れた上で淡々に経緯を説明する彼女から感じたのは、優等生すぎないシニカルさとネガティブな情報を深刻に感じさせず伝えられるセンスだ。 「嘘つきの眼」を持ち、最終的にファンから殺害される『【推しの子】』アイ、殺人犯で半グレ組織から追われる父と共犯者の母と生活を共にしながら徐々に真相に近づいていく『マイホームヒーロー』の零花。可憐なルックスを持ちながら、死や暴力描写ありきの作品の中で“悲劇のヒロイン”ではない立ち回りができるのもまた、女優・齋藤飛鳥の魅力なのかもしれない。
あさみ