いつか福島を題材に 芥川賞鈴木結生さん(福島県郡山市出身) 古里、創作活動の原点 小5まで福島県で暮らす
福島県郡山市出身の新進気鋭の作家に、日本文学界を代表する栄誉が贈られた。15日に選考結果が発表された第172回芥川賞を受賞した鈴木結生(ゆうい)さん(23)=福岡市在住=は、多くの作家が目標とする賞を初ノミネートで射止めた。受賞後の会見で鈴木さんは、福島県への思い入れと今後の創作活動への意欲を語った。関係者は「日本を代表する作家になってほしい」と期待を込めた。 会見は午後7時40分過ぎに始まった。芥川賞と直木賞の受賞者3人で壇上に立つと、まばゆいフラッシュを浴び、鈴木さんは満面の笑みを浮かべた。小学5年生まで暮らした福島県を「原風景であり、特別な場所」と言い切った。 父の仕事の都合で福岡市に転居するまで、郡山市の大成小に通っていた。5年生の時に担任だった横田安弘さん(56)=現小山田小校長=と、当時同校司書の斉川幸子さん(65)=現穂積小、安積二小学校司書=について「小学生の時に本を読むことを喜んで勧めてくれた方々だった」と振り返り、「その道の先にこういう場があったことは感動している」と感謝の思いを口にした。
福岡への転居から間もない時期には、新たな環境になじめず、ホームシック気味になった。その際、郡山での体験や情景を思い出しながら物語を書き始めたのが、創作活動の原点となっている。受賞作「ゲーテはすべてを言った」の主人公の出身地は会津に設定するなど、福島県に対する愛着や思い入れは深い。「福島を、これから先に文学の場に残せるような仕事をしたい」と決意を示した。 教え子の快挙を聞いた横田さんは「作品を楽しんで書き続けてほしい。ずっと応援している」と喜びに震えた。斉川さんは「日本を代表する作家になってほしい」と願った。 ■「県民の誇り」 内堀知事が祝福 内堀雅雄知事は「鈴木さんは『福島が自分の原風景であり、創作活動の原点』と話しており、県民の誇りとなる晴れがましい栄誉」と祝福のコメントを寄せた。 ■郡山の書店に直筆色紙展示 「思い出の本屋」 鈴木さんが子どもの頃に訪れていた、郡山市の岩瀬書店富久山店プラスゲオには鈴木さん直筆の「思い出の本屋です」の色紙を展示している。