「金持ちクラブ」と批判されるダボス会議「未来を語る場」が抱える矛盾 ホテル料金は普段の20倍、VIPはプライベートジェットで参加。極寒の周辺では貧困対策を訴える市民活動
▽氷点下10度下回る中でテント泊 会場周辺では、市民の抗議活動が恒例行事となっている。貧困層を支援するグループが氷点下10度を下回る極寒の中、テントに寝泊まりしてホームレスへの支援を訴えた。「ザ・グレート・スリープアウト」と称する活動で、リーダーのアンドルー・ファンクさんは「世界中でホームレスが増えている。指導者に対策を取るよう促したい」と語った。 チューリヒでもダボス会議に合わせて、気候変動対策や社会正義の実現を訴えるデモがあった。ロケット花火を使ってショッピングカートに火を付け、警察当局が放水車を出動する騒ぎになった。参加者の女性は「社会の不平等に我慢できず、ここに来た。政府首脳たちは信用できない」と訴えた。 環境保護団体は、VIPが会議で温暖化の問題を議論する一方で、プライベートジェット機でスイス入りすることを「大きな矛盾だ」と憤った。 ▽ステークホルダー資本主義 ダボス会議は「金持ちによる無駄なおしゃべりの場」と批判されるが、WEFのシュワブ会長は「対話の必要性を感じないとすれば、われわれは独裁の世界に生きることになる」と反論してきた。 シュワブ会長がよく使う言葉は「ステークホルダー資本主義」だ。企業は株主だけでなく、社会や環境などさまざまなステークホルダー(利害関係者)の存在に配慮し、長期的な視点に立って行動しなくてはいけないという意味が込められている。リーマン・ショックなど過去の失敗から世界が得た教訓を生かそうと多くの企業がこうした考えを採用するようになった。
会議に出席したサントリーホールディングスの新浪剛史社長に「金持ち批判」について聞くと「エリート(が集まる会議)であることは事実だから仕方がないし、どうあっても否定される。お金持ちや社会的地位の高い人だからこそやらなくてはいけないことがある」と語った。 ▽来年のダボスはトランプ氏が出席? 今年の会議テーマは「信頼の再構築へ」。ロシアのウクライナ侵攻やイスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘など国際紛争が相次ぐ中、世界各国が連携する重要性を確認した。中国の李強首相や欧州連合のフォンデアライエン欧州委員長のほか、アルゼンチンのミレイ大統領ら新興国の首脳も多数出席した。ウクライナのゼレンスキー大統領も初めて会場に姿を現し、会議の影響力の大きさを改めて示した。 2024年は50カ国・地域の計20億人超の有権者が投票所に足を運ぶ「歴史的な選挙イヤー」に当たる。各国で政治体制が変化し、米国でトランプ前大統領が当選すれば再びダボスに姿を現すかもしれない。来年以降のダボス会議はこれまで以上に注目される可能性がありそうだ。