a flood of circle、ツーマンファイナルは盟友UNISON SQUARE GARDENと激突【ライブレポート】
a flood of circleが主宰する『A FLOOD OF CIRCUS 2024』の最終日が2月14日にZepp DiverCity(TOKYO) にて開催された。ツーマンで4公演という形式になった今回の“A FLOOD OF CIRCUS”、フラッドへのリスペクトを公言する時速36km、10年以上の交流があり、佐々木亮介(Vo/Gt) が楽曲提供もしたLiSA、佐々木がとにかく好きなんだとラブコールを送ったドミコというゲストが続いた中、最後を締めくくるのが盟友UNISON SQUARE GARDEN。 【画像】『A FLOOD OF CIRCUS 2024』a flood of circle×UNISON SQUARE GARDENのライブ写真(全16枚) 7年ぶりのツーマン、フラッドが招くという形では実に15年ぶりになるという。真正面からぶつかる貴重な機会ということもあり、チケットは即完。その期待に応えるよう、思い出には頼らず、互いに積み重ねてきたモノをぶつけ合う一夜となった。 暗闇の中で斎藤宏介(Vo/Gt)、田淵智也(Ba)、鈴木貴雄(Ds) が登場して始まったユニゾンのライブは、足元を確かめるような素振りなど一切なく、「サイレンインザスパイ」から完全にぶっちぎるスタイル。巧みに重ねられる3人のフレーズやキレの良い歌声もそうだが、単純に音の精度が高すぎるのだ。ライブを待ちわびていた観客をそのサウンドで一気に惹きつけ、瞬く間に沸騰させ、斎藤の短い挨拶から鈴木のしなやかなドラムも冴え渡った「kaleido proud fiesta」に繋ぎ、イントロで大歓声が上がった「スロウカーヴは打てない(that made me crazy)」、高い強度を誇りながら緊張と緩和を行き来する面白さもある「天国と地獄」へ。興奮に誘われた観客も突き上げた拳を下ろす瞬間がない。一歩間違えれば破綻してしまいそうなトリッキーなギターリフやソロ、メロディの動きが至極当然のように1曲としてまとまっており、彼らのサウンド構築の素晴らしさを見せつけてくれるのだ。 痛快な4タテからひと息つくように斎藤が初めて佐々木に話しかけた際のエピソードを披露しつつ、「(出会った) 当時の曲をたくさんやって勝負しよう、というのもちょっと考えたんですけど……やめました。最新のUNISON SQUARE GARDENで勝ちにいきたいと思います」と頼もしい宣言をし、その流れから放たれたのが「ミレニアムハッピー・チェーンソーエッヂ」。定型的なロックチューンではなく奔放なアイデアが存分に投入された曲であり、ギターソロのユニークさは格別。楽しげなムードを加速させるように鳴らされた「いけないfool logic」も華やかさが凄い。ストリングスやブラスのアレンジ、目まぐるしい曲展開はテーマパークへ迷い込んだような感覚も味わえた。 そんなムードから一転、怪しげな雰囲気も漂い、間奏でのフロアの湧きっぷりもとんでもなかった「世界はファンシー」、爽快で疾走感溢れながら各所にフックが散りばめられた「桜のあと(all quartets lead to the?)」、シンプルなライティングで誠実に響かせたバラード「もう君に会えない」と続け、かなりの情報量がどれも詰まっているのだが、どれもがキャッチーで飲み込みやすく、終始フロアの熱気は上昇しっぱなしだ。 ここで15年前のツーマンにおける秘話を斎藤が披露し、そのライブで新曲として演奏した曲を、と「mouth to mouse(sent you)」。現在進行系のバンドとしてぶつかりつつも、やっぱり特別な夜にしたい気持ちはある。はつらつとしたグラマラスなロックチューンを響き渡らせていく。 ラストに向けてはさらにギアを上げ、エネルギッシュなプレイにいい広がりを生み出すコーラスもいい「場違いハミングバード」、万華鏡のように移り変わる展開に魅了され、まさしくタイトル通りな空間に支配される「カオスが極まる」、最後は代名詞的存在とも言える「フルカラープログラム」。斎藤と田淵が鈴木の前に集まり、より呼吸を合わせて突入した終盤の爆発力は本当に凄まじかった。 そんな大熱演を受けて始まるフラッドのライブは、黒を基調とした衣装に身を包んだアオキテツ(Gt)、HISAYO(Ba)、渡邊一丘(Ds) がそれぞれ定位置につき、真っ白なスーツをまとった佐々木の「おはようございます、a flood of circleです。Are You Ready?」という号令から「美しい悪夢」でスタート。やはりこのバンドも初っ端からの踏み込み方が常軌を逸したテンション感。いつも通りと言えばそうなのだが、躊躇も助走もなく、ライブが始まったのだから当然でしょ、とばかりに強靭なサウンドをフロアへ向けて放っていく。 魅惑的なベースラインから始まる「Dancing Zombiez」は完全無欠なダンスナンバー。〈どこまでも生き抜いて〉というフレーズも強烈に突き刺さり、フロアは揺れに揺れる。大きなクラップも起こる中で炸裂したアオキと佐々木のギタープレイ、そのバックで髪を振り乱しながら躍動するリズムを叩き出す渡邊の姿もより興奮を誘ってくれる。 そんな凄まじい熱気が漂ったところ、「友達の歌、やります」と佐々木が呟いて始まったのがUNISON SQUARE GARDENの「フルカラープログラム」だった。サラッと披露するのもフラッドらしいところかもしれない。思わぬ曲に会場全体の温度がグッと上がったタイミングでもあった。 お馴染みのお茶割りを片手に、佐々木がハンドマイクで暴れまわったのが「Sweet Home Battle Field」。高まるムード、アオキはしゃがみこむようにギターをかき鳴らし、HISAYOも遠くまで視線を飛ばし、佐々木は客席へと飛び込んでいく。観客の頭上で歌い叫び大盛りあがりとなるが、これだけじゃまだ足りないだろうと「もう1回、サビいこう! ビートよろしく!」とさらなる熱狂を求めるのもロックバンドらしいスタイルだ。 「お台場と言ったらお茶割りですね」と佐々木がうそぶきつつノドを潤し、バレンタイン当日らしくゆったりとしたビター風味な「ホットチョコレート」をアコギに持ち替えて鳴らし、熱に満ちいつでも活力を与えてくれる「まだ世界は君のもの」へ。「アンドロメダ」も実に輝かしい光を放ってくれた。 照れくささもあるのか、ユニゾンとのできるだけくだらない思い出を、と10数年前に荒木経惟の写真集を互いに男子高校生のようにはしゃぎながら見たエピソードで笑いを誘った後、「オレは死ぬまでUNISON SQUARE GARDENにジェラシーと感謝を抱いていくと思います」とユニゾンに最大級の敬意を払い、奏でたのが新曲「キャンドルソング」だった。バンドに、音楽に、生命の火を燃やし続ける彼らが投影されている心を大きく揺らすビートとコーラスがどこまでも沁みる。3月13日のリリース後、もっと大きな存在感を持つ曲になることは間違いない。 そして、佐々木、アオキ、HISAYOが渡邊と向き合い、力強いドラムが響き渡って始まる重厚感たっぷりなロックチューン「プシケ」をドロップし、今を全力で生きてこそ明日がある、と言わんばかりの「シーガル」は切れ味抜群。アオキも自然とステージ最前でギターを引き倒す。より一体感が高まったところでロックンロールのドライブ感で飲み込む「ミッドナイト・クローラー」という反則気味な流れもまた良かった。 最終盤に差し掛かったところ、佐々木が思いの丈をぶちまける。「オレは高いところを目指してない。ただ、このまま歩きたいだけ。最後に笑えるか、それは知らねえ……でも、15年前に決めた、何も持ってなくても、このまま行くって。全然このまま行けなくて、ずっと側にいるぜ、ナベちゃん。出会ったぜ、姉さん。入ってきたぜ、テツ。オレは今なら言える、間違ってねえ。行くしかねえ。クソみたいでも、こんな日がオレに夢を見せる」。フラッドが歩いてきた道は決して平坦ではなかった。そんなことが脳裏をよぎりながら届けられた「Honey Moon Song」はこの日のハイライトのひとつに違いない。 本編ラストは佐々木の人生と信念が綴られた「月夜の道を俺が行く」。振り切ったプレイを見せるメンバー、すべてを放出しようと歌詞も聴き取れないほどの勢いで歌う佐々木。余韻を引っ張ることなく締めくくり、アンコールでは「夏の砂漠」の後、生声で想いをぶちまけてから突入した「本気で生きているのなら」をセレクト。何もかもを使い切ろうと情熱をぶちまけていき、この『A FLOOD OF CIRCUS 2024』4公演を締めくくるにふさわしいフィナーレだった。 文中でも触れたが、フラッドは3月13日ニューEP『CANDLE SONGS』をリリース。その後は『日比谷野外大音楽堂への道』と題したツアーを行い、8月12日にはその集大成としてデビュー15周年を記念したワンマンライブを日比谷野外大音楽堂にて開催する。いつでも想像や期待の一歩先の未来を見せてくれるフラッドだけに、忘れられない夜を描いてくれることだろう。 文:ヤコウリュウジ <セットリスト> a flood of circle『A FLOOD OF CIRCUS 2024』2月14日 Zepp DiverCity(TOKYO) ■UNISON SQUARE GARDEN 01 サイレンインザスパイ 02 kaleido proud fiesta 03 スロウカーヴは打てない(that made me crazy) 04 天国と地獄 05 ミレニアムハッピー・チェーンソーエッヂ 06 いけないfool logic 07 世界はファンシー 08 桜のあと(all quartets lead to the?) 09 もう君に会えない 10 mouth to mouse(sent you) 11 場違いハミングバード 12 カオスが極まる 13 フルカラープログラム ■a flood of circle 01 美しい悪夢 02 Dancing Zombiez 03 フルカラープログラム(UNISON SQUARE GARDENカバー) 04 Sweet Home Battle Field 05 ホットチョコレート 06 まだ世界は君のもの 07 アンドロメダ 08 キャンドルソング 09 プシケ 10 シーガル 11 ミッドナイト・クローラー 12 Honey Moon Song 13 月夜の道を俺が行く EN1 夏の砂漠 EN2 本気で生きているのなら
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