アメリカで目立つイスラエル離れ、Z世代、非白人層に広がるパレスチナへの共感 ユダヤ系団体も停戦求め議会座り込み、来年の大統領選に影響【2023アメリカは今】
パレスチナ自治区ガザへの軍事行動を進めるイスラエルと長年、深い関係を築いてきた米国の世論に”地殻変動”の兆しが指摘されている。Z世代と呼ばれる1997~2012年生まれの若者や非白人層の間ではパレスチナへの共感が目立つ。米首都ワシントンでは、米国に住むユダヤ人たちが連邦議会で停戦を訴える抗議活動を行い、数百人が逮捕される事態も起こった。(共同通信ワシントン支局 金友久美子) 中間選、Z世代の下院議員が誕生 最年少、銃規制訴え
▽ワシントンの大学生、次期大統領選では「イスラエル重視のバイデン氏支持しない」 「パレスチナの子どもたちやその両親が日々殺され、住宅がじゅうたん爆撃を受けているのを見るのは本当につらい。ガザの人々は声を上げることもできず、私たちが代弁者にならなければいけないと思った」。ワシントンの名門黒人大学、ハワード大に通うレベッカ・アベラさん(20)とラマトウ・ンジョヤさん(18)は、ホワイトハウス近くで10月下旬に開かれたパレスチナ系団体による抗議デモに参加した理由をこう語った。 アベラさんはエチオピア、ンジョヤさんはカメルーンにルーツを持つアフリカ系米国人女性。中東と個人的な縁はないが「声を上げるのにパレスチナ人である必要はないと思う。アフリカの困難の中にも共通点があるし、例えば日本で何かが起こったときに私たちが日本人でなければ反対できない、ということはないはずだ」と話す。 米大統領選では、18歳以上で有権者登録をした米国民に選挙権が与えられる。2024年11月の次期大統領選で初めて一票を投じるンジョヤさんは「イスラエルを重視するバイデン大統領への失望が、大統領選の影響としてきっと現れるだろう」と指摘する。アベラさんは「バイデン氏はパレスチナの解放を望む米国内の意見をくみとれていない」と語気を強めた。
▽米国の世論調査、全体ではイスラエル支持が根強いが… 米ABCニュースによると、イスラム組織ハマスがイスラエルに攻撃した10月7日の後に実施された五つの世論調査では、イスラエルに共感するとの回答が、パレスチナに共感するとの回答よりも3~5倍多かった。米国内でのイスラエル支持が根強いことに変わりはない。バイデン氏もいち早く「テロは決して正当化できない」と、イスラエル支持を打ち出した。 歴代の米政権は中東での戦略的利益からイスラエルとの強固な関係を構築してきた。巨額の軍事支援を長年続け、国連安全保障理事会ではイスラエルの武力行使やパレスチナへの入植地建設を非難する決議案などにたびたび拒否権を行使してきた。 国内政治の観点からも、イスラエル支持が欠かせない構図がある。米調査機関ピュー・リサーチ・センターによるとユダヤ系米国人の人口は子どもを含めて推計約750万人(2020年)。その7割超が民主党を支持する。資産家が多く、ロビイスト団体は強力な資金力を誇る。他方、米国の人口の4分の1を占めるとされるキリスト教右派・福音派は信仰上の理由からイスラエルを強く支援。こちらは共和党の大票田で、トランプ前大統領の有力支持基盤としても知られる。