柄本佑、「光る君へ」出家した道長の剃髪シーンで「グッときた。不思議体験でした」
NHK大河ドラマ「光る君へ」(日曜・後8時)で藤原道長役を演じている俳優の柄本佑がこのほど取材会を行った。 【写真】剃髪した後の道長(柄本佑) 「源氏物語」の作者・紫式部/まひろ(吉高由里子)の半生を描く同作で、柄本演じる道長は、まひろのソウルメイト的な存在として描かれてきた。平安の世で最高権力者に上り詰めたが、24日放送の第45回「はばたき」で出家を決意。ここまで長らく伸ばしてきた長髪を剃(そ)り落とす剃髪(ていはつ)シーンは視聴者に衝撃をもたらした。取材会はクランクアップ後に行われたため、柄本は剃髪姿で報道陣の前に登場。「剃髪4日目ぐらいに若干風邪気味になりました」と苦笑しつつ「快適です。究極です」と長髪に未練はない様子だ。 この回で、太皇太后・彰子(見上愛)に仕えていたまひろは「源氏物語」を書き終え、夢だった旅に出ることを道長に報告。まひろは制止を振り切って道長のもとを去る。「まひろがいなくなっちゃって、3シーン後ぐらいにはもう出家してるから、もうそう(まひろの影響)としか思えないですよね(笑い)。(妻の)倫子(黒木華)に出家の理由を言うところとかも『疲れ果てた』って言っていて。そこが(脚本の)大石(静)先生のいいな、と思うところ。立派じゃない道長さんを今回作っていただいたっていうところに僕も助けられました」 出家に臨むシーンは、予測もつかない感情が湧いて出たという。「不思議なもんでしたね。なんか変な空間でした」としみじみ振り返る。「撮りながら、剃ってる時なんかは別にどうってことなかったんです。ショリショリ剃られてるな、なんて思ってたんですけど。髪の毛が降ってきて、手の甲に当たったんですよ。そこから一気にグッときた。『あ、なくなってってんだ…』って。不思議体験みたいな感じでしたね」。準備期間も含め、2年間苦楽をともにした長髪がなくなっていくことに奇妙な感覚が去来したという。 出家に至る直前には、まひろのひとり娘・賢子(南沙良)の父は自分であるとまひろから告げられる。「賢子に関しては、僕は気づくんじゃないか、と思ったり、ちょっと匂ったりするようなことがあるのかと思ってたんですけど、(チーフ)演出の中島(由貴)さんは『とにかく道長は気づかないよ』って言ってました。だから最後まで気づいてないです(笑い)」と衝撃の“鈍感ぶり”を明かす。 「ただ、撮影のときはそうなってるんですけど、音楽やアングル、編集とかでそこら辺は変えられるから、案外見てみたらそこまで気づいてないって感じでもないかも。受け取る側はその方なりの受け取り方をされると思いますけど、僕本人としては『道長は気づかないよ』って言われたから、気がつかずにやっていました」 第44回「望月の夜」で道長は、後一条天皇のもとに入内した娘・威子(たけこ=佐月絵美)の立后の儀のあとに開かれた穏座(おんのざ)で、いわゆる「望月の歌」と呼ばれる和歌「この世をば 我が世とぞ思ふ 望月の 欠けたる事も 無しと思へば」を詠んだ。これまで、最高権力者による傲慢な歌というイメージが伝えられてきたこの和歌だが、このシーンについて「いわゆるあの歌をまんま受け取るような解釈ではないという構想は前々からあって…」と明かす。 「実資が(『小右記』で)漢字を間違えてるんじゃないか(「この世」が「この夜」)みたいな説とかもあったので、今回は最高権力を手にして、という解釈ではないかな、と。44回の中って、道長はどんどん追い詰められていくなかで急にあれを詠む。演出の黛(りんたろう)さんと『どうやって詠むんですかね』と話し合ったりしたんですけど、今夜は良い夜だという意味合いで詠むという風なところで一応つながっている感じですかね」 「望月の歌」の場面では、宴に同席したまひろのことを思うような描写も。「あの日はバキバキに(スケジュールが)押して。銀粉が降ってたってのだけは覚えてるんですけど(笑い)。黛さんだなあと思いながら。ああいう場面でまひろを見るときっていうのは、なんかこう自信にあふれているとかよりは、ある種、ここから救い出してくれみたいな意味合いがあったりとかして。これは僕の発見で、大石先生の書かれてることとはもしかしたらズレてるかもしれないんだけど、その瞬間はやっぱり常に三郎であるっていうことが大事じゃないかと思っていましたね」 長い間「光る君へ」の道長というキャラクターに寄り添って改めて感じたのは、どこまでも“まひろファースト”であったということ。「今思うと、道長さんは本当に『対・まひろか、その他大勢』ってなってましたね。そういうふうに大石先生も書かれてますでしょうし、台本にも注釈で書いてあるんですよ。まひろが内裏に上がってきてから、『道長はまひろとのことになると、周りに目が回らなくなる』って。ト書きにそういうこと書いてあるのは珍しい。僕が迷わないように事前に書いてくださってんじゃないかとも思いますが、本当に、自然にそういう形になっていきました」 撮影は終えたが、本人としては「放送も残っていますし、今年のおしまいまでは続いている気がするので、終わってないなっていう感じが正直なところ」という。「この作品に参加できたことが、結局どういうことだったのか。2年現場をやって培われてきたスタッフさんであったり、監督さんとの関係値や厚みみたいなものを別の現場にも出せないかな、とは思いますね。1日だけの現場が今後あったとして、長い時間をかけて培われてきたものをなんか凝縮させる方法はないんだろうか、とか。これは僕の問題なんで、難しいんですけど、そのぐらいのことができたらいいなっていう気持ちでいます」。豊かなものづくりの経験を還元できるよう、今後の俳優業も突き進んでいくつもりだ。
報知新聞社