ドル独歩高で世界に痛み広がる-各国の通貨当局、対応に苦慮
(ブルームバーグ): ドル高の進行に世界の中央銀行と政府はいら立ちを募らせ、自国通貨安を食い止めるための行動を余儀なくされている。
世界の通貨当局者は口先や実際の行動を通じて自国通貨の防衛に乗り出している。米経済の強靱(きょうじん)さが米利下げ観測を後退させ、ドル高傾向を後押ししているためだ。
金融関係者の多くは年初時点でドル安を見込んでいたが、そうした予想に反し、ドル相場は2024年に入ってからほぼ全ての主要通貨に対して上昇している。円が対ドルで約34年ぶりの安値を付けたことを受け、日本の通貨当局は市場をけん制する発言を強めている。トルコ当局は通貨リラを押し上げるため予想外の利上げで市場を驚かせた。中国とインドネシアも自国通貨を安定させるために動いており、スウェーデンとインドにも圧力がかかっている。
今の円安の動きは「反対方向という意味で強い違和感」-神田財務官
こうした取り組みの強化は、22年の状況を思い起こさせる。当時はインフレ高進とドル高が新興国経済を襲い、スリランカを同国史上初のデフォルト(債務不履行)を陥らせ、スイスとカナダの当局者は自国通貨安を嘆いていた。現在、対外債務の大きい国々はなおリスクにさらされている。ドル高継続に対し、特にモルディブやボリビアが脆弱(ぜいじゃく)だ。
マネックスの外国為替トレーダー、ヘレン・ギブン氏は、「ドルは他の中銀に圧力を与え続けている」と指摘。「各中銀が引き締めサイクルの終了を検討しているように見える現在の世界的な環境を考えると、ドル支配の継続から抜け出す安全な方法はなさそうだ」と述べた。
わずか数カ月前まで、米国のリセッション(景気後退)は避けられないと思われていた。しかし実際には、タイトな労働市場や、明るい消費者ムードと政府の製造業支援による米経済への恩恵を示すデータが続いており、投資家は連邦準備制度による利下げへの期待を急速に見直している。