“ニセ性被害告発”と戦った草津町長「我ながらよくここまでやった」 当初は世論も傾倒…SNS社会運動の課題・名誉回復を考える
■あおちゃんぺ「この手の事件はファーストインパクトに勝てない」
黒岩町長が一番つらかったのは、草津町をおとしめられる発言をされたことだった。ネットでは「草津に行くと犯される」などの書き込みが出たほか、「セカンドレイプの町」とアピールされ、ニュースが世界中に伝播されてしまった。最も強調したいこととして、「これが前例になって、本当に性被害にあった人が泣き寝入りする世の中になってはならない」と訴える。 ギャルタレントのあおちゃんぺは、「この手の事件はファーストインパクトに勝てない」と語る。「熱量や興味を維持できる人は少なく、無罪でも誤解を解けないのが問題だ。メディアやインフルエンサーも、真偽を裏取りしてから伝えないと、人生を回復できないレベルまでつぶしてしまう。ゴシップ好きの人を手なずけるのは難しく、発信者側の民度を上げなければならないのではないか」。
この意見を受けて、メディアと社会運動について研究している成蹊大学の伊藤昌亮教授は、「事実確認の前に“構図”で判断することが多い」と指摘。「『女性議員が1人』『地方の町』『リコールで追い出した』といった構図で判断して、糾弾に動いてしまう。事実確認が複雑になり、ネットの反応のスピード感と異なった結果、その時間差に耐えられず、感情的な糾弾行動に出るケースが目立つ。#MeToo運動も2017年に出てきたが、2015年から告発の動きはあった。時間をかけて事実を検証しながら、最後の手段として運動として訴えていくべきだ」と投げかける。 アクティビスト個人投資家の田端信太郎氏は、「松本人志さんやサッカーの伊東純也選手の件は、裁判での決着が付いておらず、数年前の黒岩町長と似ている状況ではないか」との見方を示す。「初動のメディア対応で松本氏は事実無根と言ったが、『飲み会の存在』と『性交渉の強制』のどちらが事実無根なのかがぼやけていた。どのレベルで事実無根なのかを丁寧に伝えないと、『都合が悪いから隠していた』と認識される」。 一方、モデル・商品プロデューサーの益若つばさは賠償金の額に注目。「4400万円の損害賠償を求めても、命じられた支払額は275万円。こうしたケースは、300万円前後でどうにかなってしまうイメージがある。相手の人生を終わらせたい時、そのお金さえ用意したらどうにかなってしまう世の中は怖い」と危惧する。 前明石市長で弁護士の泉房穂氏は、「町長の件のように、はっきりテープが残っているのは珍しい。完全密室の言い合いが多く、反論してもかえって水をかけられ、炎上するリスクもある」と指摘。「他国では、制裁として高額な賠償を命じることがある。実際の損害額は判定しにくく、日本では300万円程度が多い。『それで済むんだ』とならないよう、他国を参考にしながら、悪質事案にはそれ以上の金額を認めるような時代ではないか」とした。(『ABEMA Prime』より)