具志堅の持つ連続世界防衛記録に王手! 小関桃に進む道
「WBC世界アトム級タイトルマッチ」(11月14日 後楽園ホール) 小関桃は下を向いていた。 「出直してです。やっちまったっていう試合でした」 ハードパンチャー、ランキング1位の挑戦者、ノラ・カルドザ(メキシコ)の頭がぶつかって2ラウンドに右目上をカットしてしまうアクシデント。それでも「腕を伸ばして!」というセコンドの指示を守って、スピードのある左ストレートを的確にヒットさせながら距離を作った。メキシコ陣営の好むインファイトに持ち込ませず“完封”という表現に近い内容で3-0で判定勝利した。 これで彼女の持つWBC世界女子アトム級王座の防衛記録は12に伸びた。具志堅用高氏の持つ13度の世界タイトルの連続防衛日本記録に王手をかけたというのに、小関に笑顔はない。あまりにもネガティブな様子が理解できず「何が不満だったのか?」とぶつけると。 「ひとつは流血戦になってしまったこと。会長はそこを避けるためアッパーを打つなと指示されていたのに守れなかった。それに左しかなかった。仕上りも良かったのに、やってきたことが何ひとつだせなかった」 小関は「左だけ」と言うが、最強挑戦者相手にサウスポーの利点を生かした「左だけ」でペースを握ったのだから立派。所属する青木ボクシングジムの有吉会長も「悪くはなかった」と苦笑いである。 右目を切って血が目に入ったが、動揺はなかった。そのことを尋ねると「ああいう展開は、お互いの気持ちを試される試合。そこだけは負けたくなかった」と目に力が入った。 さて、いよいよ、偉大なる連続記録へ王手である。 「今日、納得できる勝ち方ができていたら、そのことも意識しようかなとも思っていたのですが、これでは……」。記録について語り始めると声が小さくフェイドアウトした。 選手層、歴史、レベル……すべてにおいて男女のボクシングの違いは大きい。同じプロボクシングと言えど単純に両者の記録を比較することはナンセンスかもしれない。だが、以前も、このコラムに書いたが、彼女の練習に取り組む姿勢と、ボクシングに対峙する誠実な気持ちは、その記録に恥じないものだ。そして、なにより、派手さやパワーはないが、ディフェンスやスピード、コンビネーション、リズム、スタミナなど、女子ならでは洗練されたテクニックもある。小関はそれを極めようとしている。