米兵による傷害事件、1年半経っても刑事裁判始まらず 被害者は怒り吐露
地元市民にも不安広がる
この事件では逗子警察署が事件直後に同米兵を帰してしまったため、警察に対する被告の供述はない。今回被告代理人が依頼した鑑定医が録取したものが事件後初の被告の供述となる。つまり事件直後ではなく、1年後の身体状況や供述をもとにしていることも問題の一つだ。 12月8日、横浜地裁での第2回弁論後に開かれた報告集会には多くの市民が駆けつけた。 原告4人のうち最も重い被害を受けたAさんは、そうした警察側の姿勢に対し「まず〝責任がない〟という主張に驚いた。約1年半も放置しておきながら何でそういうことができるのかと呆れる。苦し紛れの言い訳としか思えない」と憤った。 飲食店や海の家を経営するAさんは事件当日、海の家の営業を終えて従業員たちと帰宅中の道で襲われ顔面や手の骨折を負い、後遺症を患っている。「突然背後から今まで受けたことのない衝撃を受け、記憶はそこまで。あれから電車を待つ時、階段を降りる時、一人で歩いている時も恐怖を感じるようになった」と第1回口頭弁論で当時の状況や思いを訴えた。仕事に復帰したのは事件から3カ月後。リハビリも兼ねた通院は1年ほど続き、その間の医療費も自己負担だ。「人生の中で自分がこうした犯罪被害者になるなど夢にも思わなかった」と驚きを隠せない。 市民の中にも不安の声が広がっている。横須賀で長年活動を続けている「原子力空母の横須賀母港問題を考える市民の会」は、裁判所に対し「迅速かつ公正な救済の判決を求める署名」を実施中(https://cvn.jpn.org/syomei/)。次回弁論は2月9日10時半から横浜地裁502号法廷にて開かれる。 ※日米両政府が設立したSACO(沖縄に関する特別行動委員会)が1996年12月にまとめた最終報告書。沖縄県内の米軍施設返還計画のほか、日米地位協定の見直しなどが盛り込まれた。
稲垣美穂子・フリーランスライター