【ボートレース】<素顔のクイーン>サッカーで培った心身武器に伊藤栞が水神祭を目指す
サッカーに情熱を燃やした学生時代。伊藤栞(21)=愛知支部・132期=は高3の21年に全国高校総体(インターハイ)に出場した。ピッチの上から水上へと戦う場所は変わったが、熱い思いはさらに燃え上がっている。憧れて入ったボートレースの世界で初勝利を目指している。 ボートレースの世界を知ったのは、小さい頃の思い出である伊藤家が行っていた正月行事だった。 「小さい頃から家族で初詣をしてから、ボートレース浜名湖に行ってました。そこで服部幸男さんとかが走っていて、選手がかっこよくてあこがれていました」 そこから、一心不乱にボートレーサーの道を目指したわけではない。小学生からはサッカーが楽しくてしょうがなかった。 「小学4年生からサッカーを始めました。地元のクラブチームに入って、ボールを蹴っていました。双子の妹と一緒に、最初はフィールドプレーヤーとしてやっていたのですが、小5の時に走るのがイヤになって(笑)、ゴールキーパー(GK)になりました。フィールドプレーヤーは1点取るとほめられますが、GKは失点すると全部の責任がかかってくる」 クリーンシートの喜びと、失点して負けた時のプレッシャーを実感していた。愛知の豊川高校でもサッカーを続けて、21年の全国高等学校総合体育大会に出場した。 「小さい頃は選手のお父さんが教えてくれました。高校に入ってからはGKコーチがいたので上達しました。1、2年生は控えだったので、3年生になった時に初めて試合に出た時はガチガチでした」 愛知では強豪校だが、東海地区では今年の全日本高等学校女子サッカー選手権で2大会連続7度目の優勝を飾った日本のトップレベルが立ちふさがった。 「東海地区には藤枝順心(静岡)がいて、とても高い壁でした。東海地区は藤枝順心と他の高校という感じで、なんとか夏の全国大会には出られました」 初出場対決となった帝京長岡(新潟)との1回戦で0―8で敗れた。伊藤は前半だけで6失点してハーフタイムでピッチを後にした。栄光と挫折を味わった高校生活だった。進路を考えるタイミングで看護師も考えたが、レーサーの道を選んだ。 「父から『今しかできないことをしたら』と言われて、試験を受けました。スポーツ推薦の枠をもらえたのも良かったです」 第132期はボートレーサー養成所に50人が入所したが、プロになれたのは27人。狭き門を突破した。23年5月にとこなめでデビューしたが、水神祭はまだしてない。 「近い目標は1勝することです。そのためには旋回技術を上げたいです。守屋美穂さんに憧れています。守屋さんのように握って回れる選手になりたいです。最近ではスタート勘もついてきたと思うので、そこも磨いていきたいです。将来的には、『どのタイトルが欲しい』とかはないですが、長くA1級で活躍したいです」 サッカーで培った体力と精神力。きっかけさえつかめば初勝利も遠くないだろう。長く活躍する下地は十分にある。 ◆伊藤 栞(いとう・しおり)2003年5月1日生まれの21歳。愛知県出身、愛知支部の132期として23年5月20日にとこなめでデビューした。161センチ。豊川高校では女子サッカー部に所属し21年インターハイにGKとして出場。
報知新聞社