実戦で使えるかどうか未知数の新球挑戦が、無駄に終わるならば、その時間を今ある持ち球を磨くことにあてた方が合理的なのかもしれない。元中日の“レジェンド”山本昌も、引退の前年のキャンプで、新球カットボールに挑戦したが、そのため投球フォームがおかしくなり、基盤であるはずの真っ直ぐがいかなくなったという失敗経験を持つ。「大切なのは真っ直ぐを磨くこと」をキャンプの第一テーマだと言う。 　元千葉ロッテの里崎智也氏は、バレンタイン監督がチェンジアップ取得を全投手に指示して、ある一定の効果を出したという経験を持つ。その上で新球の取得に関しては「僕の新球に関する考えは、成績でもチームのトップに立ち余裕のある投手は新球に挑戦することはOK。逆に成績が頭打ちで余裕のない投手は今ある球を磨くべきというものです。バレンタインがチェンジアップの習得を指示して、小林宏之、薮田安彦さんは、明らかに良くなりました。ただ、変化球は、あくまでも質のいいストレートがありきのものです。変化球ありきのストレートではありません。だから余裕のない人、つまりストレートに力のない人は、新球への取り組みをする前に、まずストレートの力を磨くことに専念すべきでしょう」という意見だ。 　おそらく、この里崎氏の意見が新球習得の是非論に関する正論だと思うのだが……新球の行方をシーズンを通じて追いかけるのも面白い野球の見方なのかもしれない。 　（文責・本郷陽一／論スポ、スポーツタイムズ通信社）