腕失い義手装着支援した男性との再会を願う ウクライナ人の医療支援する三重のNPO
三重県の医師らでつくるNPO法人が2023年、ロシアの軍事侵攻で腕を失ったウクライナ人男性3人を県内で受け入れ、義手を着けるなどの支援をした。治療を終えて帰国後、夢を見つけ、新たな生活を歩み始めた人がいる一方、消息が分からない人も。NPO理事長は「どうか元気でいてほしい」と再会を願う。(共同通信=高橋良太) 支援に取り組んだのは同県松阪市の「SunPanSa(サンパンサ)」。上村真由(うえむら・まさよし)理事長(82)は、父親が戦時中に負ったけがの影響で、生活面で苦労を重ねた様子を目の当たりにした経験から、けがをしたウクライナ人を支援するNPOを22年9月に設立。クラウドファンディングで資金を集め、23年4月に30~50代の男性6人が家族とともに来日した。 このうち3人は治療方針が合わずに帰国したが、残る3人には筋肉が発する電気信号を利用して指先を動かすことができる「筋電義手」などの義手を着ける治療を実施。リハビリを経て23年8月までに祖国に戻った。
上村さんは、男性たちの義手に問題がないか確認するため、24年8月上旬にウクライナを訪問。首都キーウ(キエフ)南方の町で、30代男性と約1年ぶりに再会した。抱擁後、義手を握りしめると笑顔で柔らかく握り返された。 男性は帰国後、ボランティア活動をしていて「戦争でトラウマを抱えた人を助けるため精神科医になりたい」という夢も語った。戦争が終われば、日本で再び会うことを約束したという。 だが、残る2人には会えなかった。50代の男性は、激しい戦闘があった南東部マリウポリ出身。ロシア側の攻撃で娘を亡くしている。協力関係にある地元団体によると「残された家族と故郷のために戦う」と言い残し、消息が分からなくなったという。もう1人は戦闘のトラウマが原因で入院生活を送っており、会うことができなかった。 上村さんは一日も早く平和が訪れ、3人との再会を祈る。NPOは今後も支援を続ける方針で、ウクライナの人々にとって心の支えになるような文化交流も検討している。