<私の恩人>吉本興業入りしたプリンセス天功 死の淵から救ってくれた不思議な縁
■誤作動による事故 意識不明で1週間 でも「神さまが会いに行け」とおっしゃったのは、本当はこういうことだったのかなという出来事が、後日あったんです。 2007年7月、福井県鯖江市での公演中でした。私が箱に入って、そこに20本の剣が突き刺さるというイリュージョンだったんですが、コンピューターが誤作動してしまい、予定外のタイミングでいきなり剣がすべて刺さってしまったんです。 私が使う道具は、世界中あらゆるところに運ばないといけないので、とても強い鉄でできている。だから、重たいし、間違って当たったりすると、大ケガにもなってしまう。そのイリュージョンだけは何とかやりきったものの、すぐに病院に運ばれまして、当時、ニュースにもなりました(全治1ヵ月の重傷と診断)。幸い、診断よりは早く復帰できたんですけど、実は、病院に運ばれてから、意識がない状態が1週間ほど続いていたんです。 ■生死をさまよう中 横尾さんが「まだいくな」 そこで、変な話ながら、夢なのか何なのか、私の意識の中に出てきたのが横尾さんでした。横尾さんは空飛ぶじゅうたんみたいなのに乗って、こちらに向かって叫んでるんです。「まだいっちゃダメだ」って。横尾さんに腕をつかまれて、引っ張られた瞬間、目が覚めて意識が戻りました。 さらに、驚いたのが、後日、横尾さんにご挨拶に行った時のこと。アトリエにあった描きかけの絵が、私が夢の中で見た、じゅうたんの絵だったんです。 こんなことがあると、縁って、いったい何なのかなとも思いますね。今は自宅がラスベガスにありますし、ほとんど海外で生活をしています。でも、人との縁、その大切さだけは日々感じながら生きています。 (聞き手・文責/中西正男) ■プリンセス天功(ぷりんせす・てんこう) 生年月日、本名、非公表。1976年、知人の紹介で初代・引田天功に入門。78年、芸名・朝風まりとして歌手デビューを果たす。初代の逝去にともない、80年、2代目・引田天功を襲名。数々の脱出イリュージョンの素晴らしさと美貌で、イリュージョニストとしての地位を築く。90年には「マジシャン・オブ・ザ・イヤー」を受賞。米国ではアニメの主人公にもなっており、キャラクター人形は大ヒット商品となった。吉本興業所属を記念した特別新喜劇「プリンセス天功のよしもと摩訶不思議花月」(28~30日、大阪・なんばグランド花月)も行われる。 ■中西正男(なかにし・まさお) 1974年大阪府枚方市生まれ。立命館大学卒業後、デイリースポーツ社に入社。大阪報道部で芸能担当記者となり、演芸、宝塚歌劇団などを取材。2012年9月に同社を退社後、株式会社KOZOクリエイターズに所属し、芸能ジャーナリストに転身。現在、関西の人気番組「おはよう朝日です」に出演中。