子どもを授かったゲイ夫夫(ふうふ)が「親のエゴだろ」「子どもがグレそう」との心ない批判に思うこと。将来、娘に「なんでうちにはお母さんがいないの?」って聞かれたら…
千葉県で小児科の看護師として働くハヤトさん(35)と精神科の訪問看護師として働くタカフミさん(36)は、2018年に結婚式を挙げ、養子縁組をしている夫夫(ふうふ)である。2人は現在、娘のなーちゃん(1)と家族3人で暮らしている。インタビュー後編では、子どもを授かるに至った経緯や同性カップルならではの苦悩について聞いてみた。 ハヤトさんとタカフミさんが行なった結婚式の写真
子どもを授かることに対する周囲の反応
––––子どもを授かることになったきっかけは? ハヤトさん たまたまSNSで海外のゲイファーザーたちの写真を見ていたときに、「海外ではゲイでも子育てできるんだ」って思ったんです。「日本でもできるかな?」って彼に相談したら、「実は、僕も子どもを育てたいんだよね」って言われたんです。 それで、ブログに「いつか日本で子どもを育てられたらな」と投稿をしたら、3組のレズビアンカップルから「協力して授かりませんか」というお話をいただいたのが始まりでした。 ––––子どもを授かるまでの準備期間はどれくらいでした? ハヤトさん 6年~7年くらいかかりましたね。お話をいただいた3組の中から1番意見が合ったカップルと半年以上かけて価値観をすり合わせました。すごく細かいところまで話し合い、司法書士さんを間に入れて合意書を作りました。今はそれぞれの家庭に子どもがいる状態です。 ––––今でも向こうの家族と会うことはありますか? ハヤトさん 定期的に会ったり、プレゼントを送り合ったりしています。僕たちは、なーちゃんが生みの親や出自を知る権利を1番大事にしていたので、“なーちゃんが大きくなってからも会ってくれる人”が条件でした。 ––––子どもを授かることに対して、親御さんは反対していましたか? ハヤトさん 「母親のいない子どもは不幸になるからやめなさい」って母に大反対され、それがきっかけで絶縁した期間がありました。でも、なーちゃんが産まれたときに写真を送ったら、一気に変わりましたね。それからはかわいがってくれています。 タカフミさん 僕の親も「子どもがいじめられたり、苦労したりするんじゃないか」という理由で反対していました。でも、娘が産まれたら、母が最初の2ヶ月間、育児を手伝いに広島から来てくれました。 ––––子どもが生まれてからの手続きは大変でしたか? ハヤトさん 大変でしたね。僕らも司法書士さんもみんな手探りの状態で、いろいろ調べながら手続きしました。何度も市役所に足を運んで事情を説明し、手続きが全部終わったのは娘が生後2ヶ月くらいのころでした。男女の夫婦が1回で終わることを、自分たちは複数回しなきゃいけないことがけっこうありましたね。 あとタカフミには親権がないので、何かあったときのために、僕とタカフミは養子縁組を結んでいるんです。なーちゃんが生まれる前に、僕が元の籍を抜けてタカフミと同じ苗字になりました。戸籍上、タカフミは僕の親で、なぁちゃんの祖父になります。 ––––育休は取りましたか? ハヤトさん 親権が僕にしかないので、タカフミは育休を取れなかったんです。だから、僕は育休を取り、彼には仕事を辞めてもらって、なーちゃんが保育園に通い始めるまでは専業主夫をしてもらっていました。 タカフミさん 今年4月になーちゃんが保育園に通い始めたのですが、それからは週に3回パートで精神科の訪問看護をしています。
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