<熊本地震>注意! エコノミークラス症候群は車中泊だけが原因ではない
熊本地震で関心を集めているエコノミークラス症候群。避難者の間では「車中泊が危ない」との見方が広がっているが、現場の医師らは「長期間、避難所生活が続き、足をあまり動かさなければ、発症する可能性は高くなる」と警鐘を鳴らす。 余震が続く熊本県では、「自宅は怖い」と避難所で暮らす人々も多く、医療関係者による症候群「予備軍」についての検査や、足の運動などを促す啓発活動が進められている。
避難所生活の高齢者にも予備軍が
エコノミークラス症候群とは、足を長時間動かさず、血流が悪くなってできた血の塊(血栓)が血の流れに乗って、肺に達し、肺の動脈を閉塞させてしまう病気だ。 熊本県西原村の避難所では、26日、熊本市民病院の医師や看護師らが検査に訪れた。エコーの診断装置を使い、避難した人々のふくらはぎに血栓ができていないかどうかをチェック。血栓らしきものが確認された人には、血栓の量などを詳しく調べるため、血液検査を行った。約40人を検査し、複数人に血栓が確認された。結果は後日、知らされるという。 「避難所で寝泊まりしているから、大丈夫だと思っていた」 86歳の男性は意外そうに話した。検査で血栓が見つかったという。 男性は左足が不自由で、杖がないと歩けない。地震が起きる前は、簡単な散歩や庭の手入れを日課としていたが、避難所に来て以来、動くのは数メートル離れたトイレに1日数度行くぐらい。一日の大半を、ベッドに腰掛けて、同じく避難する友人と雑談している。 70歳代の女性は、元々、ふくらはぎに静脈が浮き出ているのが気になっていたが、避難生活に入り、その症状が悪化したため、巡回に訪れた保健師や看護師に相談。避難生活に疲れ、日中はほぼ横たわっているが、少しでも歩いたり、足の運動をするよう指導された。 避難者に聞いて回ったところ、高齢者に血栓が確認された人が多かった。 避難所になるのは体育館や公民館など公的施設が多く、高齢者も歩きやすいよう、スロープなどのバリアフリー対策は施されている。しかし、災害時の看護に詳しい災害支援ナースは、 「出入り口には支援物資が入った段ボール箱がひっきりなしに運ばれたり、一時的に積んであったりするほか、急ぎ足で行き来する人も多い。常にスロープが使える状態でもないため、足元が危ないからと外出がおっくうになり、結果的に、あまり動かない高齢者が増えているのではないか」と指摘する。