伊藤匠、藤井聡太を破り初タイトル獲得!今後も令和のライバル対決から目が離せない!
無敵の藤井聡太八冠が敗れる!そんなニュースが6月20日に日本中を駆け回った。藤井をフルセットの末に破ったのは叡王戦五番勝負挑戦者の伊藤匠七段。藤井と同学年であり、プロ入りした時からライバル候補として期待の高かった大器が、将棋史に残る活躍を成し遂げた。 【写真を見る】叡王戦で激闘を繰り広げた藤井聡太 伊藤と藤井のタイトル戦は今回が3回目。昨年の第36期竜王戦七番勝負が伊藤にとって初戦、そして藤井にとって八冠達成後の初防衛戦だった。だが、結果は藤井が4連勝と圧倒。普通はタイトル戦でストレート負けを喫したら気落ちして調子も落とすものだが、伊藤の勢いは止まらず、続く第49期棋王戦五番勝負にも挑戦者として登場する。しかしこちらも藤井の壁は厚く、第1局を持将棋(引き分け無勝負)に持ち込むものの、第2局からは3連敗でこのシリーズも白星をあげることができなかった。ここまで伊藤は藤井に対し、公式戦で0勝10敗1持将棋と圧倒されていた。 ここまでやられていた伊藤だが、さらに第9期叡王戦五番勝負でも挑戦権を獲得し、藤井に挑む。第1局を藤井が制し、連敗記録が伸びてまた一方的なスコアになると思われた。だが、第2局で伊藤が勝利。対藤井戦、そしてタイトル戦番勝負での初白星だ。続く第3局は藤井が序盤からリードを奪い、そのまま完勝になるかと思いきや、終盤で怒涛の追い込みを見せて伊藤が形勢逆転。最後は藤井の猛追をかわしきり2勝目。五番勝負を2勝1敗として藤井を追い込んだ。だが、第4局は藤井が圧倒。少し苦しいとされる後手番で完璧な指し回しを見せて、「藤井強し」をあらためて印象付ける。 そして運命の最終第5局。これまでの藤井のタイトル戦でフルセットにもつれ込んだのは、第6期の叡王戦のみだ。そのシリーズと同様、今回も藤井は最終局で先手番となる。そして穴熊からすさまじい強攻を見せて形勢をリード。いわゆる藤井曲線で完勝になるかと誰もが思ったが、伊藤は粘り強い指し回しから徐々に流れを引き寄せる。いつしか攻守も形勢も逆転。最後も藤井の勝負手に対して正確に返し、ついに藤井を投了に追い込んだ。 藤井はタイトル戦初登場から番勝負は22連勝中だったが、ついにストップ。素晴らしい記録で、「初登場から」という条件付きではまず破られない記録だろう。 伊藤は藤井から大幅に遅れたようだが、それでも歴代8位の年少記録となるタイトル獲得だ。二人は世間的にはまだ大学生である若さ。これからも数多く大舞台で戦い、いずれは百番指しにも届くだろう。伊藤がさらにタイトルを奪うか、はたまた藤井が奪い返すか。令和のライバル対決から目が離せない。 文=渡部壮大
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