【神戸新聞杯】ダービー上位馬不在で条件戦組に好機 血統も後押しするオールセインツとメリオーレム
例年、非常に堅い重賞だが
神戸は歴史的に海上交通の要衝として発展してきた。平安末期には日宋貿易の拠点として平清盛によって都が移されたこともあった。室町期には日明貿易、そして江戸末期の開国によって外国人居留地が設けられた。似た成り立ちの横浜で競馬が行われたように、神戸もおよそ150年前、現在の神戸市役所付近で外国人によって競馬が開催された。「ヒョウゴ・レース・クラブ」という競馬団体も作られ、生田神社の東側、いまの東門街あたりに競馬場が建設された。東門筋のS字は競馬場があった痕跡でもある。 【ローズステークス2024 推奨馬】先行力生きる舞台、条件次第で勝率75%データ該当で確勝級! SPAIA編集部の推奨馬を紹介(SPAIA) 外国人による競馬開催から約30年後、神戸市栄町で神戸新聞は創刊された。競馬場があった東門街からみれば、神戸三宮駅を隔てた南側にあたる。神戸港を望む地で生まれた神戸新聞。その社杯が関西圏唯一の菊花賞トライアルになったのは2000年から。無敗の三冠馬ディープインパクト、コントレイル、三冠馬オルフェーヴル、二冠馬ゴールドシップなど華やかなりし名馬たちが菊花賞へ飛躍を遂げた。 交通の要衝がもつ経由地としての繁栄と役割は神戸新聞杯にも刻まれていく。今年の舞台は中京。東西を結ぶ東海道の中間地点でラスト一冠に向け、名乗りを上げるのはどの馬だろうか。データは過去10年分を使用する。 1番人気は【5-1-0-4】勝率50.0%、複勝率60.0%と心強い。ただし、前走ダービー4着以内【5-1-0-3】は条件として外せない。今年のダービー上位陣は、ダノンデサイルが菊花賞直行、ジャスティンミラノは天皇賞(秋)、シンエンペラーは先日の愛チャンピオンS3着を経て凱旋門賞などバラバラ。神戸新聞杯への出走はなく、この心強いデータは使えない。といっても、勝ち馬はすべて5番人気以内で、基本は堅いレース。菊花賞の優先出走権がかかる2、3着に穴馬が入ってくる可能性はあるものの、大きくは荒れない。
オールセインツ、メリオーレムにも勝機あり
今年の神戸新聞杯は例年と比べても、少し状況がちがう。前走ダービー組は10着ジューンテイクが最高着順。はたして傾向通りいくだろうか。 前走ダービーは【9-6-3-30】勝率18.8%、複勝率37.5%だが、着順でみると、1着【4-0-0-1】勝率、複勝率80.0%をはじめ、4着以内【7-4-0-5】と明らかに上位馬優勢。10着以下となると、【1-2-1-16】勝率5.0%、複勝率20.0%で、ダービー組といっても、計算できない。もちろん、上位馬がいての数字なので、そもそもダービー上位着順がいない今年は、データも前提が揺らいでくる。 前走ダービーでの人気別をみると、9番人気以内【8-2-3-11】勝率33.3%、複勝率54.2%に対し、10番人気以下【1-4-0-18】勝率4.3%、複勝率21.7%。せめて9番人気以内はほしい。しかし、これもビザンチンドリームの10番人気が最高で、心もとない。そう、今年は前走ダービー組が計算できない神戸新聞杯だ。 こうなると、【1-4-4-53】勝率1.6%、複勝率14.5%とデータ的には苦しい前走条件戦組にもチャンスがある。前走1着【1-3-2-26】勝率3.1%、複勝率18.8%、2着以下【0-1-2-27】複勝率10.0%。前走1着馬は前走2勝クラス【0-3-1-11】複勝率26.7%、3勝クラス【1-0-0-0】と2勝クラス以上での勝利がほしい。 夏の新潟で月岡温泉特別(2勝クラス)を勝ったオールセインツ、小倉の西部スポニチ賞(2勝クラス)勝ちのメリオーレムは、権利獲得はおろか勝つチャンスまで今年はある。オールセインツは3月中京で初陣を飾り、次走京都新聞杯13着と壁に阻まれた。1、2勝クラスと連勝中で、2200mは【2-0-0-1】と得意。母の母エアデジャヴーなので、秋華賞を勝ったエアメサイア、菊花賞3着エアスピネルが近親にいる。3歳秋に上昇する血統で、一族には菊花賞馬エアシャカールの名がある。 メリオーレムの春はすみれS3着、プリンシパルS2着と惜しくも二冠出走を逃した。夏の西部スポニチ賞は小倉芝2600mで2着に4馬身差快勝。菊花賞に出したい一頭だ。父シュヴァルグランは3歳秋から3連勝でオープン入り。4歳で阪神大賞典、アルゼンチン共和国杯を勝ち、5歳シーズンにはジャパンCを制した。天皇賞(春)は3度出走し、3、2、2着。遅咲きであり、長距離に強かった。メリオーレムにとって心強い血だ。 ライタープロフィール 勝木 淳 競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
勝木 淳