東京五輪「全体の予算は誰が管理するのか」上山信一特別顧問が会見
東京都・都政改革本部の上山信一特別顧問は2日、東京の外国特派員協会で会見した。上山氏は、2020年東京五輪・パラリンピックの大会全体の予算が3兆円を超える可能性に言及しているが、「結局、全体を誰が管理するのかはっきりしていない」と予算をめぐる管理体制の問題点を指摘した。 【動画】東京五輪の開催費用「今のままでは3兆円超」 都調査チームが調査結果
「企業でいうCEOやCFOが決まっていない」
同改革本部の五輪調査チームは9月29日の会合で、東京大会の開催総額の試算を発表した。ロンドン五輪では、全体で約2兆10000億円かかったが、そのうち施設などのハードが東京五輪の想定と同程度の約7500億円、残りが警備や輸送、運営などのソフトの費用だった。これをベースにすると「2兆円を超えるのはほぼ確実。全体の進め方の問題を考えるとさらに数割上乗せされるだろうということで、3兆円を超えるリスク、可能性を問題提起した」と試算の狙いを語った。 上山氏が五輪予算について危機意識を持つ理由は二つある。一つは、東京五輪組織委が約5000億円、IOCが約1000億円を拠出するが、仮に3兆円も必要になると、残りの部分を政府と東京都とでまかなわなければならなくなる。特に東京都は、開催計画で組織委の赤字分をすべて負担する決まりになっており、費用がかさむと、自分たちが制御できないところで最後に赤字だけ負担するという構造になっているという。 二つ目は、予算全体を管理する機能が不十分な点。東京大会は、組織委とJOC、東京都、IOCの4者で契約を結んで進める体制になっているが、「組織委員会は全体の予算に責任を持てない。東京都は都の施設以外を直接コントロールできない。JOCは実際のオペレーションにはあまり関わらない。日本国政府は警備などで協力するが実際に契約はしていない。結局、全体を誰が管理するのかはっきりしていない」と訴えた。 さらに「一番上には調整会議があるが、議長が存在しない。予算全体のあり方や優先順位などを決める、企業でいうCEOやCFOの役割が決まっていない。ここにわれわれは危惧を覚えた」と述べた。こうした点から、11月1日の都政改革本部の会合で、上山氏は、総予算を組織委と都とで管理する「共同CFO体制」の確立を提言した。 今後、調査チームとしてソフトのコスト削減にどう対処するのかを問うと、「輸送と警備などの分野について、東京都の調査チームには細かく分析する権限がない」と語る一方で、一大学教授としての見解として「予算計画が出れば、輸送や警備などのコスト内訳がはっきりしてくると思う。それに対してIOCが他の五輪での経験を提供し、日本でも実際にそれだけのものが必要かなどといった見直しの議論が具体的に始まるだろう。私はこの問題をあまり悲観的にはとらえていない」と述べた。 (取材・文:具志堅浩二) ■全編動画