大型株投資で"億り人"になった長期株式投資さんの思考法
2004年から株式投資を始めた長期株式投資さん。2006年のライブドアショックや、2008年のリーマンショックで手痛い損失を経験しましたが、2009年に大型配当株メインの投資法に切り替えて以降、安定的に資産を拡大。2023年3月には、資産1億円を達成し早期リタイアされました。 2024年5月には「 【超完全版】フルオートモードで月に31.5万円が入ってくる「強配当」株投資 」(KADOKAWA)を上梓されました。新NISAを活用したポートフォリオの構築例や、大型優良株の探し方などを詳述されています。 今回は本の内容や、長期目線での注目銘柄について、長期株式投資さんにお話を伺いました。 ■負けにくい投資法で資産を拡大 ここ10年以上、高配当の大型株中心の投資を行ってきました。2023年の運用資産は1億5000万程度で、受取配当は税引き後で年間370万円となりました。2024年には同446万円を見込んでいます。 小型株などで一発逆転を狙うような話もよく耳にしますが、私の場合は安定性の高い大型株を長期保有する戦略で、着実に資産を増やしてきました。その中でも割安性があり、下げ幅の小さい堅実な銘柄を選ぶことで、損失が限定的な「負けにくい」投資法を続けてきました。 短期的には株価の上下があっても、長期投資なら勝てる確率が大幅に上がります。有名投資家のウォーレン・バフェット氏や、フィリップ・フィッシャー氏などの投資哲学がベースになって、今の投資法にたどり着きました。 ■銘柄選びの基準 具体的な銘柄を探す際には、まずPER(株価収益率)が低いこと、EPS(1株当たり純利益)が横ばいか右肩上がりであることを確認します。そのうえで好業績であるなど、株価が上がらない時でも自分がそれなりに納得して保有できる理由があることが大切です。 さらに長期保有をするからには、その企業が事業上の競争優位性を持っていることが重要となります。ニッチな市場で独自の強みを持つことや、ブランド力の強い商品を持つことなどに注目していくと、投資判断の精度が高まります。 一例として、三菱商事(8058)を長期保有しています。同社含め総合商社の強みは、時代の変化に合わせて経営資源を循環させて、利益を創出している点です。社内で「自浄作用」が働いてビジネスモデルを進化させ続けているため、常に成長性が高い状態を維持できるのです。 売却して銘柄を入れ替えることはあまりないため、株価が上がったことで三菱商事のポートフォリオ内の比率が高くなっています(2024年3月22日時点で23.80%)。リバランス(資産配分を元に戻すこと)を考える人もいるかもしれないですが、売却した時に税金が20%かかるのは大きいですし、ほかに期待値の高い企業がない限りはこのままでいいと思っています。 また、私は経営戦略などを考えるのが好きなタイプなので、中期経営計画の動画も見るようにしています。社長が参考になるようなことをぽろっと言ったり、今後の見通しを実際に言葉で聞けたりというメリットがあります。自分が注目している、あるいは投資額が大きいものについては、確認してみるといいかもしれません。 ■長期目線での注目銘柄は? 長い目で見た時には、NTT(9432)にも期待をしています(2024年3月22日時点で7万8521株保有、ポートフォリオの構成比8.02%)。事業には競争力があると思いますが、株価が低下しており割安感があります。 現在、AI(人工知能)が普及していく過程で、発生するデータ量が増え続けています。この情報を処理するためのデータセンターが続々と増設されていますが、稼働に必要な電力も急激に増えている状況です。この電力をどうやって補うかが問題視されているわけです。 そこで救世主になるかもしれないのが、NTTが掲げる「IOWN(アイオン)構想」です。ずっと前から出ている話ではありますが、この構想が実現したらデータセンターで必要な電力が100分の1になるくらいのインパクトがあります。「光電融合技術」というもので、省電力・低遅延を実現することが期待されています。 また、エネルギー関係ではINPEX(1605)も注目しています。インドネシアで進めている「アバディLNG(液化天然ガス)プロジェクト」では、すでにインドネシア政府の承認を取得しており、2030年頃の生産開始を目指しています。実現後には年間約950万トンのLNGを生産できるようになり、長期にわたり安定したエネルギー供給が可能になるとのことです。 そうなれば売り上げや利益水準は大きく変わってくるでしょう。まだ5年以上先の話にはなりますが、割安なときに買って、ゆったりと構えていればいいかなという考えです。 ■資産形成をする方にアドバイス 2024年8月5日には日経平均株価が4451円安と、大幅に下落しました。今後もいつ暴落が起こるかはわかりませんが、これまでの歴史を知っておくと気持ちが楽になるかもしれません。日経平均株価のPBRを見て最低ラインを想定するなど、どこまで下がる可能性があるかを把握しておくといいと思います。 また、あまり語られないことかもしれませんが、とくに資産が小さいうちには節約も大事なことです。私も働いていたころには、生活費を下げる術を模索していました。生活費を引いて余った部分を投資に回し、配当も再投資することで資産が増えていったのです。 もちろん個々の事情はあると思いますが、たとえば所得の10%をなんとか投資に回す、というルールを作るといいでしょう。そのうえで、ビジネス上の優位性がある大型株を、じっくり長期保有すれば着実に資産を増やしていけると思います。 (構成:伊藤退助) ※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
長期株式投資