新技術「インカメラVFX」が生むリアル 神戸市が2030年代の三宮を描いた理由
映画やドラマの映像を制作する際に使われる「インカメラVFX」という技術がある。巨大なLEDの壁に3DでつくったCG(コンピューターグラフィックス)を映し出し、それを背景として使用して撮影するやり方だ。 ディズニーなどのハリウッド映画でよく使われていたが、国内では昨年のNHK大河ドラマ「どうする家康」で本格的に導入された。一見するだけでは本物と区別がつかないほどリアリティがある映像が制作できるので、テレビCMやプロモーション動画などでの活用が期待されている。 この技術を駆使したショート動画を、神戸市がYouTube上で公開した。描いたのは、神戸の玄関口である三宮駅、その付近の2030年代の姿だ。 ■新技術の力を借りて未来の街をリアルに再現 神戸市が動画を制作しようとした意図は、はっきりしている。 阪神・淡路大震災からの復興で財政難に見舞われた神戸市は、長年の課題だった三宮駅周辺の再整備になかなか乗り出せなかった。それが原因で、駅前の賑わいについては、京都や大阪の後塵を拝することになっていた。 しかし、阪神・淡路大震災から20年目の2015年、ついに再整備がスタート。2030年までにJR三ノ宮駅の駅ビルや西日本最大規模のバスターミナルなどが次々と完成し、駅前の様子は大きく変化する。 さらにこの付近のエリアでは、地方都市では人口増の切り札のようにもてはやされているタワーマンションの建設を規制した。三宮を買い物やアートシーンを楽しむ非日常のエンターテインメントの空間にするという、神戸市の方針からだ。 とはいえ、新しいビルの完成予想図を見せられ、歩道を広げて歩きたくなるエリアにすると説明されてもわかりづらい。住民や議会からも将来どう変わるのかのイメージが掴めないとの指摘もあった。 そこで神戸市は、新技術「インカメラVFX」の力を借りて、未来の街を現実味あふれる映像で描き、わかりやすくそれらの指摘に応えたのだ。 これまでも現実に存在しないものを映像化する場合には「VFX(特殊効果)」と呼ばれる技術があった。このVFX、映画界ではジェームズ・キャメロン監督がいち早く取り入れたとされている。 キャメロン監督の代表作である「タイタニック」では、全長236メートルという原寸の90パーセントにあたる船のセットも組まれたが、航行するときの波しぶきや水平線に沈む太陽は、CGを駆使したVFXが導入されている。また2009年の「アバター」では、ほぼ全編にわたってVFXが使われていた。 近年、そのVFXでよく使われたのは、グリーンの背景の前で役者を撮影して、そののちCGでつくられた映像を合成する方法だった。