知床半島沖観光船沈没事故から2年…20人死亡6人行方不明 時間が止まったままの乗客家族「二度と起こしてほしくない」安全対策強化が進まない現実も
北海道放送(株)
事故から23日で2年です。知床半島沖で、26人を乗せた観光船が沈没した事故。国や地元で安全対策が掲げられていますが、課題も浮かび上がっています。 「空飛ぶ海猿」と呼ばれる、海上保安庁の機動救難士。海の事故現場で、空から人命救助を行うエキスパートです。 真新しい「オレンジ服」に袖を通したのは釧路航空基地の倉幸永(くら・こうえい)隊員です。 2年前。潜水士だった倉隊員は、知床半島沖の海の上にいました。 釧路航空基地 倉幸永隊員(29) 「すぐに緊急出航して現場に向かって捜索に加わった。5~6時間は経過していたと記憶している」
2022年4月23日。北海道斜里町ウトロから出航した観光船「KAZUⅠ」が知床半島沖で沈没。乗客乗員20人が死亡、6人が行方不明になりました。 倉隊員の船に引き揚げられたのは、3歳の女の子でした。 釧路航空基地 倉幸永隊員 「自分の子どもも同い歳だったので感情移入してしまうところはあった。最悪な状況は想定していたけれどもなかなか発見ができなかったのは悔しい、ずっと心に残っている」 事故当時、北海道内で機動救難士がいた基地は函館のみ。北海道東部は、出動から1時間以内に到着できない「空白地帯」でした。 事故を受け、海上保安庁は釧路基地に9人の機動救難士を配置。ヘリコプターを1機増やして3機体制に。
さらに紋別には、ヘリが離着陸できる大型巡視船を配備し道東の救助体制を強化してきました。 残る北海道北部の「空白地帯」も解消に向け検討していくとしています。 事故で浮かび上がったのは、国の検査や救助体制も含めた、観光船の「安全」のもろさでした。 国は、事業者の管理体制や船の安全基準の強化など66項目もの対策を掲げ、半数以上についてはすでに実施していると説明します。 一方、止まったままの時間も…。帯広市に住む男性です。 長男と元妻が行方不明の男性 「どうしてなんだろう、どうして2人と会えないんだろう」 長男(当時7)は母親(当時42)と「KAZUⅠ」に乗船。いまも行方がわかっていません。 3月、男性は、断腸の思いで長男の「認定死亡」手続きをしました。 いまは、運航会社側を訴える民事訴訟の準備を進めています。 長男と元妻が行方不明の男性 「書類上、認定死亡手続きをしただけで気持ちは何も変わっていなくて、旅客船のルールでたくさんの項目が改善されたが、逆を言えばそれだけ今まで何もやっていなかったのか。これだけ多くの改善点があったということは、それだけ見過ごしてきたということ」 大きすぎる犠牲のもとで掲げられた安全対策。しかしそれすらもいま、足踏みをしています。 北海道知床の観光船「KAZUⅠ」の沈没事故の事故調査報告書によりますと、死亡した20人は海に投げ出されて低体温症で意識を失い、溺れたとみられています。
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