【同性婚訴訟】LGBTQ当事者は高裁初の違憲判決を「画期的」と評価、法制化の流れに「伝統的な家族が崩壊」と反発も
「結婚の自由をすべての人に」を掲げて全国5つの裁判所で争われていた同性婚訴訟が、各地で終盤を迎えています。このうち、北海道で争われていた訴訟では、控訴審の札幌高裁が、同性婚を認めない現行法の規定は「憲法違反」と判断。高裁として初めてこの問題で違憲判決を出しました。G7(主要国)では日本だけが同性カップルに対する法的保障がありませんが、これらの訴訟によって法制化への道は開かれるのでしょうか。専門記者グループのフロントラインプレスが「同性婚訴訟」をやさしく解説します。 【地図】世界で同性婚を法律で認めている国や地域 (フロントラインプレス) ■ 「婚姻の自由」「法の下の平等」に反する 同性婚訴訟が提訴されたのは、5年前の2019年2月14日、バレンタインデーのことでした。札幌、東京、名古屋、大阪の地方裁判所で、同性のカップルが一斉に「同性婚を認めないのは憲法が定める『婚姻の自由』や『法の下の平等』に反する」などとして、国を相手に損害賠償を求めて訴えたのです。同年9月には福岡でも提訴。さらに2021年には東京地裁で別の訴訟が起こされました。 訴訟の中で、各地の同性カップルは何を訴えていたのでしょうか。各地の弁護団はほぼ同様の主張を繰り広げていました。それは次のような内容です。 「結婚するかどうか、誰と結婚するか、婚姻をするかどうか、いつ誰と婚姻をするかについては、当事者間の自由かつ平等な意思決定に委ねられるべきであり、婚姻によって生じる法的効果を享受する利益は、性的指向にかかわらず、誰にも等しく享有しうる重要な利益である」 「同性愛者らは、結婚の持つ重要な法律上の効果を享受できないだけでなく、そのことにより、社会から異性愛者よりも劣ったものとして扱われ、その尊厳を日々傷つけられ、同性愛者らに対し、社会から異性愛者よりも劣ったものとして扱われることによる劣等感を植え付けられてきた」
■ 次々と違憲・違憲状態の判決 一連の訴訟で、最初に結論が出たのは、2021年の札幌地裁判決でした。この判決は同性婚に関する日本初の司法判断で、判決の柱は「同性間での婚姻を認める規定を設けていない民法および戸籍法の婚姻に関する規定は憲法14条1項に違反する」というものでした。憲法14条1項は「法の下の平等」を定めた条文で、次のように書かれています。 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。 札幌地裁の判決は、原告の賠償請求こそ認めませんでしたが、同性婚を法的に認めない日本の現状は「法の下の平等に反する」と明確に認めた画期的内容でした。 これに続く各地の判決も同様の結果となり、次々と「違憲」「違憲状態」の判決を下していきます。違憲・違憲状態を認めなかったのは、2023年6月の大阪地裁判決だけ。その判決でさえ、婚姻の自由を定めた憲法24条1項に言及し、「同性愛者にも異性愛者と同様の婚姻やこれに準ずる制度を認めることは、憲法の普遍的価値に沿う」との考えを示していました。 つまり、「結婚の自由をすべての人に」訴訟をめぐる下級審の司法判断は、同性婚を法的に認めるべきだという方向性を強く打ち出していたのです。そして、高裁としては初の司法判断が今年3月に札幌高裁で下されました。