天皇陛下「お気持ち」は国民と政府へのメッセージ にじむ生前退位への意向
摂政や名代を置けばいい?
生前退位ではなく、「摂政」や「名代」を置けばいいのではないかという意見もあります。摂政とは天皇が未成年や重病などの場合に天皇の機能を代行する役職で、名代は代理のこと。 陛下はこの日のお言葉で、摂政を置くことについて「天皇が十分にその立場に求められる務めを果たせぬまま、生涯の終わりにいたるまで天皇であり続けることに変わりはありません」と否定的な言葉を述べられました。 昭和天皇は皇太子時代に、病状の良くない大正天皇の摂政を務めたことがあります。天皇陛下も同じく皇太子時代に昭和天皇の名代として諸外国を訪問しましたが、「名代が行くことが相手にとって失礼と感じられた」(小田部教授)という思いから、陛下は名代などを置かずに「天皇が国事行為や公務をするのが筋だと考えられたのではないか」と推察します。
政治的発言が禁じられている天皇
そもそも明治時代より前の天皇は「自分の地位は自分で決めるのが伝統だった」と小田部教授は強調します。昭和天皇まで124代の天皇のうち64人が「生前退位」をしたといい、その中には「上皇」として院政を行なったケースもあります。歴史上、生前退位は645年に女帝だった皇極天皇が譲位したのが最初で、江戸時代の1817年に退位した光格天皇が最後です。 この日、陛下が生前退位について直接触れることはありませんでしたが、「憲法の下、天皇は国政に関する権能を有しません」と前置きした上で、「国民の理解を得られることを、切に願っています」と述べられました。天皇は憲法で政治的発言が禁じられています。「これまでは憲法に抵触する可能性があるので言えなかった」と小田部教授。今回のお気持ちの表明は「国民や政府に考えてほしい、というメッセージだったのではないか」と話しています。