【脱炭素が招くガソリン高騰】中東・ロシアの地政学リスク上昇よりヤバい、原油開発への投資激減で供給不足の危機に
原油価格が昨年10月以来の高値で推移している。 中東・ロシアにおける地政学リスクの上昇に加え、米中の需要回復への期待が背景にある。 中長期的には地政学リスクよりも脱炭素への圧力がガソリン価格を高騰させかねない。原油開発への投資は激減しており、近い将来、供給不足に陥る懸念がある。(JBpress) (藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー) 【写真】イエメンで4月1日に開催されたフーシ派主催の会議 4月3日の米WTI原油先物価格(原油価格)は前日比0.28ドル(0.3%)高の1バレル=85.43ドルで取引を終了した。「世界の原油市場の需給が引き締まる」との観測から原油価格は昨年10月以来の高値で推移している。 まず、いつものように世界の原油市場の需給を巡る動きをアップデートしておこう。
■ OPECプラス、減産の実効性を高める 石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの大産油国で構成するOPECプラスは4月3日に合同閣僚監視委員会(JMMC)を開催し、減産を維持することを確認した。OPECプラスは先月の会合で日量220万バレルの自主減産を6月末まで延長することに合意している。 OPECプラスは今回の会合で自主減産の実効性を高める方針を示した。 JMMCの声明によれば、イラクとカザフスタンが減産の完全な遵守や過剰生産分を帳消しにする措置を講じると約束し、4月末までにOPEC事務局長に詳しい計画を提出することになったという。 OPECプラスの個別の動きを見てみると、OPECの3月の原油生産量は前月比5万バレル減の日量2642万バレルだった。だが、イラク、ナイジェリアなどが目標以上の生産を行っているため、OPECの生産目標を上回る状態(日量19万バレル)が続いている*1 。 *1:OPEC産油量、3月は前月比日量5万バレル減=ロイター調査(4月1日付、ロイター) ロシアのノバク副首相は3月29日「第2四半期は原油の輸出よりも生産の削減に重点を置くことを決めている」と表明している。 OPECプラスの減産を追い風に世界の市場シェアを拡大させてきた米国だが、このところ生産量が伸び悩んでいる。足元の生産量は日量1310万バレルとピークに比べて20万バレル少ない状態が続いている。 原油価格の上値を抑えてきた需要サイドには明るい兆しが出ている。