越境攻撃に同行…日本人写真家が見たウクライナが“制圧した町” 現地記者に聞く和平への見通し
■越境攻撃 戦況への影響は?
森圭介キャスター 「ここからはモスクワ支局の平山晃一記者に聞きます。ウクライナ軍の越境攻撃ですが、戦況にどういった影響を及ぼしているのでしょうか?」 平山晃一記者 NNNモスクワ 「ウクライナにとっては一定の成果があったわけですが、戦況が有利になったとは必ずしも言えない状況です。これ、なぜかといいますと、もともとウクライナ軍は越境攻撃により、劣勢が続く東部ドネツク州で戦うロシア軍の部隊を引きつける狙いがありました。しかし、ロシア軍は寄せ集めの部隊でこれをしのぎ、主要部隊は移動させずに東部で猛攻をしかけていて、要衝ポクロウシクに急速に迫っています。ここを陥落させれば、プーチン大統領が目標とするドネツク州全体の制圧にまた一歩近づくため、今度はロシア軍にとって大きな戦果となります。そのため、プーチン大統領は今週、ウクライナ軍の狙いは外れたとして、越境攻撃は失敗だと強気の発言を繰り返しました」 平山記者 「一方のゼレンスキー大統領も東部をめぐる戦況について、『困難』だと認めています。ロシアの占領地を保持しつつ、東部でも守りを固める二正面作戦となっていて、戦力の分散で厳しい状況が続くとみられます」 森キャスター 「いずれにしてもこのウクライナ侵攻も長期化しています。今後の和平への見通しというのはどうなっていくんでしょうか?」 平山記者 「両国共に将来的な和平交渉を見据えているわけですが、まずはその交渉で優位に立つことを狙った戦場での攻防が続くとみられます。プーチン大統領はウクライナ東部での戦況に自信を深めています。越境攻撃を退けた上で、東部で圧倒的な戦果をあげ、有利な立場で交渉を迫るシナリオです。一方のゼレンスキー大統領も、越境攻撃で制圧したロシア領を交渉のカードに使うとみられていますが、今後の焦点はウクライナ国内の守りを固められるかどうかにかかっていて、今後も戦場でのせめぎ合いが続きそうです」