図解で学ぶ「プレスの打開方法」。セカンドボールに対処する適切な位置取りとは【BoS理論】
日本サッカーが欧州から学ぶことは多い。その1つとして、ドイツ・ブンデスリーガの名門シュトゥットガルトで指導者、スカウトを歴任した河岸貴氏は「Ballgewinnspiel:ボールを奪うプレー」を挙げる。ここでは、その具体的な理論を記した同氏の著書『サッカー「BoS理論」 ボールを中心に考え、ゴールを奪う方法』から一部抜粋して紹介する。(文:河岸貴) 【図解はこちら】
●ロングボールに対する明確な対策 一方で、プレスを無駄にする、または打開されるプレー、いわゆる「プレッシングキラー」があります。これもこれまでに何度か指摘したとおりです。 ①コントロールされたロングボール ②ボール保持者がノープレッシャー ③ファウル ④チーム全体でスプリントしない(チームがシンクロしていない) ⑤プレーを展開される(特にひっくり返されるようなサイドチェンジは危険) ⑥コントロールされたバックパス ③ファウルはプレスがハマっている場合にはすべきではない、とこれもすでに指摘しています。それ以外の「プレッシングキラー」は基本的にボールに対してノープレッシャー、またはプレッシャーが弱いことによって引き起こされます。したがって、今一度ボールへのアタックの強さは強調されるべきでしょう。 それでも、ハイプレス、ハイラインのサッカーを指向すると、ロングボール一発であっさりと失点してしまうことは少なくありません。「BoS(ベーオーエス)理論」にとって、ロングボールへの対策は当然ながら重要となります。「セカンドボールを拾うためにコンパクトにする」のはもっともですが、ここではより明確な対策を紹介します。 相手がロングボールを蹴ってきた際、まずそのボールに頭を越されたFW、MFはセカンドボールのために背走し、ボールに対してコンパクトな陣形にします。もちろん、その前に例えば相手GKに簡単にボールを処理させないことが大事になります。 そして、マンツーマンディフェンスへと移行し、セカンドボールを有利に拾うために相手の前に入ります。「なんとなくこの辺に落ちそう」といった曖昧なポジション取りではなく、マンツーマンで相手を捕まえることで、相手にセカンドボールを簡単に拾わせないという発想です(図5)。一番避けたいシチュエーションはセカンドボールを相手にフリーで拾われ、簡単にプレーを展開されてしまうことです。ボールがスペースに落ちた場合は、マンツーマンディフェンスからスタートを切り、そのボールにアプローチします。 チーム全体としてのロングボールへの対策は、まず一人のCBがヘディングを競ったとして、他のDFは深くポジションを取ります(「Tiefensicherung:ティーフェンジッヒャルング」=「背後のケア」)。右CBがヘディングに競りにいくならば、右CBを頂点として右SBと左CBで背後の「ケアの三角形」(「Sicherungsdreieck:ジッヒャルングスドライエック」)を形成し、深くポジションを取り、より背後をケアします。DFラインの「背後のケア」と頭上を越された選手たちで、前記したように「ロック」する(「Schließen:シュリーセン」)ことで「セカンドボールのリング」を完成させます(図6)。 次に、プレスラインが高い位置で、陣形を整えながらボールを奪いに行ったときに、相手がロングボールを蹴ってくる場合はどうでしょうか。全体的に前がかりになっていることもあり、往々にしてDFラインの選手がヘディングに競り合いにいきます。深い返しのヘディングで再び素早く相手のDFラインまで、またはその背後まで押し戻すには良い条件と言えます。 一方で、プレスラインが低い位置で、相手がロングボールを蹴ってくる場合はどうでしょうか。自陣においてセカンドボールにアプローチできる相手の人数が増えますが、ここでのヘディングの競り合い、またはフリックから背後に抜け出そうとする相手の選手は少なくなります。 なぜなら、DFライン+GKも背後をケアできる状態(深さのコントロール)で、背後を突くのは予測とタイミングが正確に合わない限り難しいからです。CBはヘディングの競り合いにいくのではなく、背後のスペースをケアし、ボールを背後に流させます。DFラインの後ろのスペースは数的優位なのでコントロールできるので、流れたボールを落ち着かせてしっかりと保持します。そして前がかりの相手の背後を狙うか、またはビルドアップを試みます。可能であれば、このロングボールは状況的には中盤、特にボランチがヘディングの競り合いにいきます(図7)。
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