奥田民生さん=2024年10月4日、東京都品川区、友永翔大撮影

　来年5月には満60歳の誕生日を迎える奥田民生さん（59）はミュージシャン、音楽プロデューサー、音楽レーベル代表などさまざまな顔を持つ。これまでの仕事や仲間、人生を振り返った「59―60」（ダイヤモンド社）という本を出版した奥田さんに還暦について聞いた。 【写真】ギターを持つ奥田民生さん 　本には「俺は60歳になったら『1回すべて捨てます』『引退します』」と書いてある。本当に引退するのですか？と質問すると、「いやいや、ないです。来年はすでにパツパツに仕事が入っていますから」との答えだった。 　奥田さんが「棺おけに入れたい物のリスト」として本に書かれていたのは「ベビースターラーメン」「アイスの実」「パピコ」「いいちこ」など。もしもの時を考えているのかと問うと、「いやいや。棺おけに何を入れるかなんてぜんぜん、考えませんよ。編集者に聞かれたから答えただけ」といい、深い意味はないと語った。 　さらに終活については「遺言だってまだ書いてませんから。たぶん、今後も書かないんじゃないかな。俺、どうでもいいもん、死んだあとのことなんて」とにべもなかった。 　本では来年、還暦という節目で人生を振り返っていたが、そこを質問すると、意外な答えが返ってきた。 　「世の中にのっとって振り返ってみたものの、ちょっと早かったかもしれないと。俺にとって60歳ってまだまだ途中なので節目にしちゃダメというか、もう打ち上がったみたいにしないでくださいという感じです。人生、振り返るのは今の時代、70歳でよかったんじゃないかと」 　若い頃から盟友で、PUFFY（パフィー）の曲も一緒につくった井上陽水さんとの思い出も本には記されていた。 　陽水さんから学んだことは、歌詞のつくり方と、記者のインタビューへの受け答えなど「人付き合いの仕方」だという。 　奥田さんによると、陽水さんはインタビューで、何を答えているかよくわからない時があるという。「わざと記者が想定外のことを言い、本心を見せず、けむに巻くようにしゃべっていると思います。俺らと話す時はそんなしゃべり方はしないので」と明かした。（編集委員・森下香枝） 　1965年広島生まれ。1987年にロックバンド「UNICORN」のボーカリストとしてデビュー。「すばらしい日々」などでヒットを飛ばし、94年にシングル「愛のために」でソロ活動をスタート。「イージュー★ライダー」「さすらい」などの代表曲がある。井上陽水とのコラボレーションや音楽プロデューサーとしてもPUFFYなどをブレークさせた。音楽レーベル「ラーメンカレーミュージックレコード」などを立ち上げた。