歯学博士照山裕子の100歳まで食べられる歯と口の話

「100歳まで食べられる歯と口の話」 ＜６＞ 　中国の詩人、杜甫が書いた詩の中に「明眸皓歯（めいぼうこうし）」という言葉があります。世界3大美女と言われる楊貴妃は、瞳が澄んで明るく、歯が輝くように白かったことを表現したのですが、以後、美しさを形容する単語として定着しました。多くの患者さんを拝見していると、口元に明るさがあると清潔感が増し、若々しくエネルギッシュに見えることは事実です。現に、60代や70代というシニア層の方からの審美相談は昔よりも増えています。 　多くの方が、若い頃に比べて、歯の色がくすんできた、黄ばみが目立つようになったとおっしゃるのですが、これには理由があります。歯の表層のエナメル質（半透明な層）から、内部の象牙質（黄味を帯びた層）が透けて見える構造が歯の色をつくります。加齢とともに内部の象牙質は厚みを増す傾向にあるため、ボリュームが増えて黄味が強くなれば、当然隠しきれなくなるので、歯が暗くなったように見える仕組みです。 　歯科医院で行う「医療ホワイトニング」という処置は、表層のエナメル質にアタックをかけ、すりガラス状に結晶構造を変化させることで、象牙質の黄ばみをマスキングする効果を持ちます。歯質の色素自体を分解する作用もありますが、こうした効果を持つ薬剤は歯科医療機関でしか扱えない点も重要です。 　年齢と共にエナメル質自体がすり減ったり、亀裂が入ることもあります。表層がすり減ればますます象牙質が透けますし、亀裂部分が着色すれば汚れたように見えてしまいます。＜1＞象牙質の厚み＜2＞エナメル質の変性、という2つの要素に歯の色が左右されることを知っていただき、どのような対処法が合っているかを歯科医院で相談するのが近道です。ちまたにはたくさんの美容情報があふれていますが、医療ホワイトニングは非常にコスパの良いアンチエイジング法といえます。