焼肉店の「カルビ」は本当のカルビではない…消費者庁が全国焼肉協会に改善要請を出した本当の理由
焼肉店の「カルビ」とは一体なんなのだろうか。肉YouTuberの小池克臣さんは「カルビは韓国語で『あばら骨と、その周辺の肉』の意味だが、焼肉店では違う部位の肉もカルビとして売られている」という――。 【この記事の画像を見る】 ※本稿は、小池克臣『肉ビジネス 食べるのが好きな人から専門家まで楽しく読める肉の教養』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。 ■「カルビ」とはどこの部位なのか 焼肉では希少部位ブームと共に、様々な部位が広く知られるようになりましたが、定番メニューと言えるのは依然としてカルビとロースだと思います。 では、そのカルビとロースはどこの部位かご存じでしょうか。 カルビとは韓国語で「あばら骨と、その周辺の肉」を意味しています。つまり、日本名では大きく肩バラや友バラと呼ばれ、細かな部位名で言うと、ブリスケ、三角バラ、フランク(ササミ)、カイノミ、タテバラなどが含まれます。 これらの部位は、基本的に脂がしっかり付いた部位が多くなります。特に三角バラは、細かなサシが散りばめられた芸術的な霜降りの部位で、特上カルビといった具合に、カルビの中でも最上位の部位として扱われています。 ■「脂のついた部位」をカルビとして提供 ところが、日本の焼肉店ではカルビの定義である「あばら骨と、その周辺の肉」以外でも、脂が付いている部位をカルビとして提供している場合があります。 日本の焼肉店では、脂のついた部位をカルビとして提供することが伝統的に行われてきたのです。 続いてロースとは「背中の肉」のことです。 肩ロース、リブロース、サーロインの3部位は背中にある1本の肉ですが、これを切り分けてそれぞれの部位として名前がつけられています。
■「脂の少ない部位」をロースとして出す店が多い これらの部位をさらに細分化すると、ロース芯(リブロース、サーロイン)、巻き、エンピツ、カブリといった呼ばれ方をします。 もちろん、これらの部位をロースとして提供している焼肉店はありますが、カルビと同じように、実はこれらの部位以外をロースとしている焼肉店は非常に多く見られます。 カルビが脂のついた部位として認知されてきた中で、ロースは脂が少ない部位として認知されてきました。 背中の肉はご存じの通り、代表的な霜降りの部位です。 日本の焼肉店では、伝統的に脂の少ないカメノコやシンシンといったモモの部位やランプをロースとして扱うお店が多いのです。 ■食品偽装ではなく、伝統的な名称に過ぎない ここまでを整理すると、精肉店ではカルビと言えばバラと呼ばれるあばら骨周辺の肉を指し、ロースと言えば背中の肉を指しますが、焼肉店ではカルビは脂のついた部位を指し、ロースは脂のついていない部位を指すケースもあるということです。 これは食品偽装といった物々しいものではなく、古くから焼肉店で行われていた慣習でもあります。 実際にカルビの場合、霜降りであるサーロインやリブロース、ザブトンなどをカルビとして提供している焼肉店を見かけます。 これらの部位はあばら周辺の部位よりも遥かに高級なので、食品偽装が目的であれば辻褄が合いません。