イランの軍事顧問殺害によって考えられる「三段階のエスカレーションのシナリオ」 中東情勢
国際政治学者で慶應義塾大学教授の神保謙が12月27日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。イスラエルがイラン革命防衛隊のムサビ氏を殺害したことにより、さらに緊迫化する可能性が出てきた中東情勢について解説した。
イスラエル、イランの軍事顧問を殺害 中東で戦闘拡大の懸念
イランメディアは12月25日、イスラエルがシリアの首都ダマスカス郊外を攻撃し、イラン革命防衛隊のムサビ上級軍事顧問を殺害したと伝えた。イスラエルと敵対するイランは、パレスチナ自治区ガザのイスラム原理主義組織ハマスを支援していて、ムサビ氏の殺害により中東情勢がさらに緊迫化しそうだ。 飯田)イスラエル側の反応はないようですが、イランのライシ大統領が声明を発表し、「イスラエルは代償を必ず払うことになる」と報復を警告しています。 神保)イスラエルとハマスの戦争が続くガザ地区に報道の焦点が集まりがちですが、それを取り巻く情勢において、戦端は少しずつ拡大していると思います。既に10月ぐらいから、シリアに対する空爆は目立たなくなっていますが、イスラエルとアメリカの双方が進めているのです。
今回の攻撃によって、イスラエルやアメリカに対する何らかの攻撃が数ヵ月のうちに起こる懸念も
神保)殺害されたムサビ氏は、シリアとイランの軍事協力における調整役のような人でした。彼らはシリア東部から、イラクの駐留米軍に対して攻撃を行っていました。また、アラビア半島のイエメンにおいて航行を妨害するフーシ派の攻撃など、シーア派のネットワークを使う形で「戦端を中東全体に広げていくのではないか」という懸念があり、それに対する警告が込められていたのかも知れません。かなり大きな話になりかねないと思います。 飯田)そうですね。 神保)中東の問題が「どのぐらいエスカレートしていくのか」と考えたときに、1つのポイントは、「レバノン南部のヒズボラがどう同調するか」ということと、その先にあるシリア、そしてその先にあるイラン。その三段階のエスカレーションのシナリオがあるのですが、今回イランが強く反応したことによって、直接ではないかも知れませんが、イスラエルやアメリカに対する何らかの攻撃が懸念されます。例えばホルムズ海峡、あるいはフーシ派の攻撃の強化などが、このあと数ヵ月の間に起こりやすくなると思います。