新型コロナ対応に「基礎研究で貢献を」 名古屋大・岐阜大の新法人発足
名古屋大学と岐阜大学の経営統合による新たな国立大学法人「東海国立大学機構」が1日に発足した。新型コロナウイルスの影響で両大学とも入学式は中止され、静かな船出となった。 初代機構長に就任した松尾清一・名大総長は「人類史上かつてないスピードで変化する時代に、勇気を持って未来をつくる人材を育成したい。新型コロナに対しても、両大学の強みを生かした基礎研究で将来的に大きな貢献ができるだろう」と意気込みを示した。
大学の名称は変わらず、事務管理など共通化
東海国立大学機構は、大学の国際競争力強化や経営安定化などを狙い、国が掲げた「一法人複数大学」制度の法改正を受け、県境をまたぐ国立大学同士で全国初の試みとして実現した。意思決定機関の「機構役員会」の下、事務管理を大幅に共通化した上で両大学に「運営会議」を新設し、効率的な運営を進める。両大学自体の名称や教育研究の方針を定める「教育研究評議会」のあり方は変わらない。 この日、主な役員とマスク姿で記者会見した松尾総長は「日本の大学はそれぞれに努力をしているが、このままでは世界的なトレンドに追いつけない。今回の統合を機に、両大学の構成員が大きな志を持って人類社会に貢献できる次世代型の大学をつくりたい」と述べた。 大学総括理事・副機構長となった森脇久隆・岐阜大学長は、統合により「糖鎖」(鎖状の糖の構造や性質を調べて創薬などに応用する研究開発)分野の共同研究が進むと強調。「岐阜大学の糖鎖研究センターではウイルス感染症も研究分野として掲げ、ウイルスが細胞に接着するメカニズムや病原性を発揮するメカニズムの研究もしてきている。一方の名古屋大学は糖鎖の臨床研究で大きな力を持っている。(新型コロナに対して)成果として出てくるのはまだ先だが、統合で共同研究拠点ができることの期待は大きい」と力を込めた。 学生に対しては、新型コロナの影響で当面、教室での大人数の授業が制限されることから、両大学でオンライン講座や電子教材の準備を急いでいるという。松尾総長は「海外への渡航や3つの『密』を避けることなどは既に呼び掛けているが、さらにリアルタイムにしっかり伝えていきたい」と話した。 機構の事務局は名古屋大学内に置き、本部棟に新たな看板が設置された。 (関口威人/nameken)