クルマがデカいからってハンドルまでデカくする必要ある? トラックの「ステアリングホイール径」が大きいワケ
理由はトラックの車両特性にある
大型トラックはもちろん、1トン積みの小型トラックでも乗用車と比べるとステアリング径が大きく、角度が寝ているというのが常識だ。ステアリングの角度が寝ているのは、径が大きいため乗用車のように立ててしまうと足もとが狭くなったり、操舵で上下の動きが大きくなって、扱いにくくなってしまうからだ。 【画像】最近のクルマの丸くないステアリングホイールの画像を見る では、なぜトラックのステアリングは大きいのか。 それはクルマの動きを穏やかにして扱いやすくするため、というのが1番の理由だ。サーキットで速さを競うフォーミュラカーのステアリングが小さいのは、瞬時に的確な操作が要求されるからで、ハンドル径が大きいとそれだけ腕を大きく動かす必要があり、操作に遅れが生じてスピンしてしまう。 それに対して、トラックは急激なステアリング操作を行うと横転してしまう可能性が高いので、そもそもゆっくりと操作する必要がある。そのため、トラックドライバーは速度のコントロールとともに、早めの操作でクルマの動きを安定させている。乗用車と比べると、大きくてゆったりした動きに思えるが、それだけ急激な動きを抑えて、安定する操作が求められるのだ。 また、タイヤが大きく、荷物を積めば車重も重いトラックは、それだけ操舵に必要な軸力も大きくなる。パワーステアリングが装備されていても、ステアリング径を大きくしなければ操舵力が大きくなって、重くなり長時間の走行を行なうとドライバーの疲労度も大きくなってしまう。そのためにもステアリングの操舵力が軽くなるよう、リム外径は大きくされているのである。 バスのハンドルが大きいのも、同じようにゆったりとした動きとなるよう操舵することと、操舵力を軽くするのが目的だ。
スカニアは小さいステアリングを採用
トラックドライバーの運転を間近で見ることは少ない(動画などでは見られるだろう)が、バス運転士のステアリング捌きは、路線バスや観光バスに乗れば見ることができる。それはそれは鮮やかな操作に惚れ惚れすることも少なくない。 例外は北欧スウェーデンのトラックメーカー、スカニアのトラックたちだ。このブランドは大型トラックであっても乗用車のようなリム径の小さめなステアリングを、乗用車のように比較的立たせ気味の角度に仕立てている。スカニアはトラックやダンプでも比較的平坦な舗装路での走行を想定したブランドといえそうだ。シートやキャビンのサスペンション機構もあり、非常に快適というのがスカニアを経験したトラックドライバーたちからの評判だ。 最近はステアリング操作をアシストする運転支援システムも大型トラックに装備され始めた。これによって、高速巡行中の修正舵などはトラックが自動的に行ってくれるようになると、ステアリング経も小さくなっていくだろう。 そして、ステアリングと前輪の操舵機構が物理的に連結していないアクティブステアリングが採用されるようになれば、ステアリングはグルグルとまわして操作しなくても、切りたい方向に傾けて力を込めるだけでどんどん切れ角が増していくような操作に変わるはずだ。
トラック魂編集部