掃除機はキャニスター型からスティック型へ。ダイソンへの強烈な対抗意識も
コードのないスティック型掃除機の市場が戦国時代を迎えている ── 。パナソニックはパワーを増強し、家庭でメイン使いできるスティック型掃除機「POWER CORDLESS(パワーコードレス)」を8月末から発売すると発表した。最上位機種の市場想定価格は9万円前後(税別)となかなかの水準だが、日本メーカーのブランド力と技術力の高さで堂々の「横綱相撲」で勝負をかける。
掃除機はキャニスター型からスティック型へ
スティック型掃除機を使ったことがある人には実感できる点だが、従来型の製品は吸引力に乏しいものが多く、家庭の中でそれを1台目の「メイン」として使うのは厳しいという印象があった。あくまでメイン機の補完の「サブ」という位置づけであり、メインは箱形のいわゆる「キャニスター型」といわれる掃除機が多かった。 その一方で、都市部を中心にマンション居住者や共働き世帯が増えているほか、高齢化や一人暮らし世帯も増加するなど、人々のライフスタイルが多様化することで、求められる掃除機の形態も軽量化やロボット化、そしてスティック型などへ大きく変化している。 コードレスのスティック型掃除機の需要は近年右肩上がりに順調に増えている。パナソニックの推計によると2018年は掃除機市場全体の30%以上を占めるまでに成長するとみられる。 この4~6月の四半期を見ても、国内外のメーカー各社による新製品の発表が相次いでいる。ツインバード、アイリスオーヤマ、東芝、LGなどが、それぞれ特徴を持ったスティック型掃除機の新製品の市場投入を表明している。
ダイソンへの強烈な対抗意識
これらメーカーに共通して流れているのは、英ダイソンへの強烈な対抗意識だ。ダイソンはこの3月、60分間駆動する新たなコードレスクリーナー「Cyclone V10」を発売。創業者のジェームズ・ダイソン氏は「もうコード付きの掃除機にはさよならだ」と宣言した。ライバルメーカーの新製品の相次ぐ開発・投入は、こうした姿に刺激されたとみることもできるだろう。 パナソニックのランドリー・クリーナー事業部クリーナー事業統括の岡内理氏によると、同社は、様々な床材を使用したり、隅や隙間が多かったりする日本の家屋に寄り添ったりする商品づくりをしており、機能面では、特に吸引力の強化と長時間運転を売りにしている。 日本を代表するモーターメーカーである日本電産の協力を得たハイパワーのモーターを搭載。40kgの重りを吸引できる強さで、キャニスター型掃除機なみの力を誇るという。大容量リチウムイオン電池を搭載し、運転時間も最長65分という長時間運転を実現した。全体の重量を抑えるために、ボディの素材も工夫し、植物由来のセルロース・ファイバー樹脂を採用したことなども特徴だ。ダイソンを強烈に意識しているのは明らかだ。 これまでダイソンなど海外勢が幅を利かすことが多かったスティック型掃除機の世界だが、最近の活発な動きは家電製造に伝統のある日本の家電メーカーががっぷり四つの勝負をかけている構図といえる。加えて、海外で「ダイソンキラー」といわれるアメリカの家電メーカー・SharkNinja(シャークニンジャ)が日本に上陸し、コードレススティッククリーナー「EVOFLEX(エヴォフレックス)」を今夏発売するなど、国内外勢が入り乱れて競い合う戦国時代の様相だ。 目の肥えた消費者の多い日本の市場で成功するのはどこのメーカーのどんな製品なのか。パナソニックは日本のダイソンキラーになれるのか。家電メーカーにとって今年は暑くて熱い夏になりそうだ。 (3Nアソシエイツ)