「僕より先に死なないで」 アスベスト原因のがん『中皮腫』 自らも病に苦しみながら患者を笑顔で励まし続けた7年間 右田孝雄さんが遺してくれたもの
希少がんゆえに情報も乏しい中皮腫。同じ思いを抱える患者やその家族が、全国にいました。 【右田孝雄さん】「(病気に)負けないぞという気持ちをみんな持ってほしいなと思います」 自らも当事者として、患者たちに励ましの言葉を口にする右田さん。 【中皮腫患者の家族】「本当どうしていいのか分からなかった」 【中皮腫患者の家族】「どこから手をつけてもいいのか分からなかった。助かりました」 【右田孝雄さん】「がんばってください」 患者同士をつなぐ自身の取り組みについて、右田さんは次のように語っていました。 【右田孝雄さん】「受け入れられないことがみんなに起きているわけでしょ。そこで悩んで、悩んで。一人で悩んで落ち込んでいく。その落ち込みを『がんばろうや』って引き上げてあげるのが患者同士ちゃうかなって」 「中皮腫サポートキャラバン隊」を結成し、孤独だった患者をつなげていった右田さん。明るく振る舞うその姿は、いつしか患者たちの希望になりました。
■ウェブサイト作成や国への要望 患者の未来のために
仲間と共に、ウェブサイトの作成にも取りかかりました。 【右田孝雄さん】「(ウェブ上で中皮腫について書かれていることは)中皮腫の患者は予後が悪いとか、治療法とか難しい言葉しか書いていないから、その中でもがんばって生きている人、長期に生きている人がいるというのを分かってもらえるものを作りたい」 同じ中皮腫患者で、右田さんと共に患者たちのために尽力した栗田さんも…。 【栗田英司さん】「(患者は)お年寄りが多いじゃないですか。いくらテキストでやっても読まないんですよね。中皮腫になったらどうするかという映像を撮っていくとか」 さらに、治療法が少ない中皮腫の医療体制の充実を国に要望するなど、“患者の未来”のために動き続けました。 【右田孝雄さん】「生きるために仕事しているんやろ。だったら、患者が生きられるようにしてくれよ!」
そして、思いを込めた患者のためのウェブサイトが完成。 【右田孝雄さん】「中皮腫患者が中皮腫患者のために作ったポータルサイトです。一人でも多くの方の参考になるように作りました」 ウェブサイトには、治療法や闘病の体験記などをまとめました。患者が明るく前向きに生きられるようにと願って…。 しかし、無情にも訪れる仲間の死。 【右田孝雄さん】「複雑なんよ。俺もそうなるかもしれへんなって。こんなに元気だけど、自分もそういう運命を歩むのかって思ってしまうな」 患者や家族との交流会で、右田さんが口癖のように言っていた言葉があります。 【右田孝雄さん】「一つだけお願いがあります。僕より先に死なないでください。僕は死ぬまで元気ですから」 余命宣告を受けた日から7年が過ぎ、一人で歩くことが難しくなっても、できることをやり続けました。 【右田孝雄さん】「困ったことがあったらキャラバン隊に遠慮なく相談していただいて。患者としておこがましいんですけども、私ども力になれると思うので、よろしくお願いします」
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