アニャ・テイラー=ジョイ&クリス・ヘムズワースが「マッドマックス」初参戦を語る「なにより心躍ったのはウォー・タンクのハンドルを握った時」
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(15)で鮮烈なデビューを飾った戦士フュリオサの知られざる過去を描いたジョージ・ミラー監督最新作『マッドマックス:フュリオサ』が5月31日(金)より公開される。フュリオサを演じるのは、『ザ・メニュー』(22)、『デューン 砂の惑星 PART2』(24)など話題作に出演し、主演ドラマ「クイーンズ・ギャンビット」で第78回ゴールデン・グローブ賞のリミテッドシリーズ、テレビ映画部門で女優賞に輝いた俊英アニャ・テイラー=ジョイ。彼女の宿敵ディメンタスを「マイティ・ソー」シリーズのクリス・ヘムズワースが演じている。劇中、激しいバトルを繰り広げる旬のスター2人の対談が実現。初共演の感想やジョージ・ミラー監督との仕事など舞台裏を明かしてくれた。 【写真を見る】矢が全身に刺さった!?アニャ・テイラー=ジョイのファッションにも注目! ■「アニャのキャラクターに真摯に取り組む姿勢は、見習うべきことが多かった」(ヘムズワース) ――お2人は初の共演ですが、一緒に仕事をした感想を聞かせてください。 アニャ・テイラー=ジョイ(以下、テイラー=ジョイ)「実は以前、ある作品で衣装担当の方とお話をしていた時に、ヘムズワース兄弟はみんな優しくて周囲への気配りのできる人たちだと聞いていたんです。実際クリスと共演したらその話どおりの方でした。参加している作品のことを第一に考え、この作品にとって最善のことをしたいという意識がにじみ出ていて、ちょっと感動しました」 クリス・ヘムズワース(以下、ヘムズワース)「僕はアニャの優しさに感動しました(笑)。彼女は仕事に対して情熱的で、誰とでもコラボレートするのがうまいんです。そんな仲間と仕事をするのは刺激をもらえるだけでなく、何事もスムーズに運ぶし、なにより楽しい現場を過ごすことができるんです。キャラクターに真摯に取り組む姿勢は、見習うべきことが多かったですね」 ■「フュリオサ自身が悲劇性を引きずっていないところに共感した」(テイラー=ジョイ) ――アニャさんは脚本を読んでフュリオサを演じることがすばらしい経験になると思われたそうですね。 テイラー=ジョイ「フュリオサは悲惨なバックグラウンドを持つキャラクターですが、彼女自身が悲劇性を引きずっていないところにとても共感したんです。わずかな可能性でも希望を捨てず、自分の想いを貫き通すポジティブな性格の持ち主で、正しいことを貫くという鋼鉄のような意思の強さにも心を動かされました。自分らしさを貫きたいと思っても、その世界を仕切る男たちに拒まれる。女性なら一度はそんな経験があると思います。でもフュリオサはどんな状況に置かれても、自分の可能性を信じ自分が想像すらしていなかった道を切り開いていくんです。そんな彼女にシンパシーを感じたし、彼女を演じることでこれまでにない経験ができると思いました」 ――オーストラリア出身のクリスさんにとって、「マッドマックス」シリーズへの参加は特別な想いがあると思います。 ヘムズワース「この作品に参加できたことに、いまだエキサイトしています。父が第1作で暴走族を演じたスタントマンと知り合いだったこともあり、僕のなかで『マッドマックス』はタイトルを聞いただけでノスタルジーを感じる作品なんです。もし若いころの自分に、将来『マッドマックス』シリーズに出演できたと知らせることができたら、『よくやったね、おめでとう!』と言うでしょうね。オーストラリア映画の歴史のなかでも特に重要な作品でもあり、僕にとってこれ以上の喜びはないんです」 ■「着ている服やマントを含め、皇帝など権力者をマネていると考えて役作りをした」(ヘムズワース) ――劇中でアニャさんは何台もの車やバイクに乗っていますが、実際ハンドルを握ってみていかがでした? テイラー=ジョイ「いろんなビークルに乗りましたが、本当に1台1台の個性がまったく違うんです。それぞれ慣れが必要でしたが、なにより心躍ったのはウォー・タンクのハンドルを握った時。この作品を象徴するマシンなので『これが私のビークルよ!』という少しミーハーな気持ちでワクワクしました(笑)。逆に一番大変だったのはバイクです。砂地を走るためサスペンションが高く、しっかり足をつくことができなかったんです。座面の低いハーレーだったらよかったのに…と思いながら悪戦苦闘してました(笑)」 ――3台のバイクを連結したディメンタスのチャリオットもかなり個性的なビークルでしたね。 ヘムズワース「最初に乗っていたのは大型バイクだったんですが、馬車のように巨大化していったんです(笑)。このチャリオットは、ローマ帝国時代の乗り物を参考にディメンタスが考えたという設定だと思います。見た目は超クールなんですが、正直なところ、乗り物として実用的とは言えないですね(笑)。僕が思うに、ディメンタスというキャラクターは歴史上の様々な人物の英雄伝や、スピーチを参考に自己演出してるんです。着ている服やマントを含め、皇帝など権力者をマネていると考えて役作りをしました」 ■「ジョージ・ミラー監督は現場でシーンの隅々にまで目を配る、こだわりをもって臨む」(テイラー=ジョイ) ――中盤の15分間も続くアニャさんのカーアクションは、断続的に78日間もかけて撮ったそうですね。 テイラー=ジョイ「このシーンはフュリオサがどんなスキルを持ったキャラクターかを伝えるための、つまり彼女自身を体現したシーンでもあります。平和な故郷から連れ去られた彼女が、様々な経験を通してどれだけ技術を修得したのか。身近にあるものを最大限に活かすスキルや、失敗が死につながるシビアな環境を生き抜くなかで身につけた能力をすべて発揮するんです。私がこの作品で最初に撮ったシーンであり、最後に撮影を終えたのもこのシーンでした。車体の下に隠れていたフュリオサが、走行中に車体側面に移動してフロントからボンネットをよじ登る一連の流れは、順撮りで撮影してもらえたので混乱することなくこなすことができました。辛かったのは車体の下にぶら下がっている時。地面すれすれだったので頭を常に上げていたため、肉体的に大変でした」 ――ジョージ・ミラー監督とのお仕事はいかがでしたか? テイラー=ジョイ「ミラー監督は現場でシーンの隅々にまで目を配る、こだわりをもって臨む監督でした。撮影は3つのユニットが並行して進行していましたが、セカンドユニットで1日20テイクのスタントを撮らなければならない日があったんです。時間との戦いでしたが、あるカットでスタントマンのヘルメットが1インチずれていたため監督は撮り直すことにしたんです。そうやって妥協せず、一つ一つのシーンを重ねていく。どれも手が込んでいて、丁寧に仕事を進める姿勢はすばらしいと思いました」 ヘムズワース「独創的で誰もが驚くほどエネルギッシュな世界を具象化できる、卓越した才能の持ち主でした。ミラー監督ならではだと思ったのは、バイオレンスな世界を描きつつ舞台裏ではとても優しく、面倒見がいいことです。危険と隣り合わせの作品は、撮影や準備にすごく手間がかかったり、場合によってはシーンそのものが失敗に終わることもあるでしょう。『マッドマックス』はミラー監督の卓越した監督術と、周囲への気配りがあるからこそ成しえた作品だと実感しました」 取材・文/神武団四郎