逆転TKOでフライ級新人王獲得の湊義生は喧嘩で高校退学したドロップアウト寸前の元球児だった…
プロボクシングの第65回全日本新人王決定戦が23日、後楽園ホールで12階級12試合が行われ一生に一度の新人王が12人誕生した。最優秀選手は、フェザー級の竹本雄利(22、クラトキ)で技能賞にはフライ級の湊義生(20、JM加古川)、敢闘賞にはスーパーライト級の遠藤健太(34、帝拳)がそれぞれ選ばれた。レベルの高い試合は竹本が1回に3度のダウンを奪った“東西MVP対決”だったが、会場を最も沸かせたのは、逆転でTKO勝利した技能賞の湊。甲子園を目指していた高校球児が、喧嘩で退学のドロップアウト。だが、その挫折を糧にボクシングの道へ進み、まずは最初の栄冠を手にした。人生は決してあきらめてはならないーー。湊が生き様を拳で伝えた。 湊の20年の人生に似ていた。 1ラウンド。つんのめったように体勢を崩したところにサウスポー、荒川竜平(29、中野サイトウ)の右のショートカウンターをもらってキャンバスに膝をつく。ダメージはなかったが、カウントを数えられた。たった5ラウンドしかない新人王戦において致命傷だ。だが、湊は冷静と情熱の狭間でボクシング脳をコントロールしていた。 「ダウンは初めて。倒さなきゃ勝てないと思ったけど、焦りはなかった」 サウスポーの荒川対策に磨いてきた右のボディストレートを何発もめりこませる。 「距離が遠いと思っていたのでジャブ、ワンツーから右のボディストレートを狙った。あれで下を意識させておきたかった」 荒川がカウンター狙いで正面に立つので面白いようにボディに当たった。荒川の警戒が希薄になった顔面に右ストレートが伸びる。右の上下の打ち分けが「練習してきたパンチ」。2ラウンドの終盤にロープに詰めて流れが変わる。 3ラウンドだった。ノーモーションの右ストレート。まともに食らった荒川は、まるでスローモーションのように下がりながら尻餅をついてダウンした。 立ち上がってきたが、今度は、右フックが炸裂。レフェリーは、もうノーカウントでTKOを宣言した。荒川は大の字。1分44秒。ホール熱狂の逆転KO勝利である。 「近い距離でやれれば勝てると思っていた。作戦通り」 真っ黒な肌は日サロ通いの成果。 K-1で活躍している武尊が日サロで体を焼く理由を「打たれて肌が赤くなったらダメージに見えるから」と何かで語っているのを見て「これはいいと思った」。ただし日サロに通いつめてから後から知った理由とか。