記者の目 WS制覇で大谷翔平は満足していない 「最終目標」には「投手」が足りない
ワールドシリーズ第5戦(ヤンキース6-7ドジャース、ドジャース4勝1敗、30日、ニューヨーク)米大リーグのワールドシリーズ(WS=7回戦制)の第5戦が行われ、ドジャース(ナ・リーグ)はヤンキース(ア・リーグ)に7―6で逆転勝ちし、4勝1敗として4年ぶり8度目の制覇を果たした。 【写真】ヤンキース・ジャッジと談笑する大谷 大谷は喜びこそすれど、決してこの日のワールドシリーズ(WS)制覇に満足はしていないのではないだろうか。レギュラーシーズンでは打率.310、54本塁打、130打点、59盗塁でナ・リーグMVPを確実視される成績。本塁打と打点はリーグ2冠王だ。そして、ポストシーズンにはメジャー7年目でたどり着き、頂点に立ったにもかかわらず、だ。 2017年11月11日。メジャー挑戦を表明し、二刀流でWS制覇を目指すことについて「世界一の選手を目指していく上で通るべき場所。野球をやっていく最終目標」と語った。今季は右肘のリハビリ過程で投手は封印。DH専念の〝一刀流〟で成し遂げた。「最終目標」には「投手」が足りない。 来季以降は、投手と打者で完全復活して、勝利に導きたいはずだ。2度目の手術のため復帰には慎重なプロセスがあり、場合によってはシーズンを通じての球数制限やイニング制限を設けられるかもしれない。来季は投手として本格復帰シーズンだが、リハビリの延長に位置付ける一年でもある。 投手として20勝、サイ・ヤング賞(最優秀投手賞)クラスの活躍をして、打者として60本塁打する。2年後、3年後にはそんな異次元の目標設定があるかもしれない。もしかすると外野や三塁、一塁などの野手としてのプレー機会を得ることも心のどこかで考えている可能性もある。 仮にその数字を残せば、周囲は「世界一の選手」と認めるだろう。すでにメジャーレベルで二刀流を貫く唯一無二の選手であることが、ファンや現役選手たちに世界一だと認知されているかもしれない。 だが、どんな偉業も新記録も、大谷自身の「世界一」の条件は満たさない。「世界一の選手」という基準は、大谷の中にのみ存在する。(大リーグ担当・山田結軌)