渡辺一平、復活の舞台・パリで目指すのは金メダル 自信取り戻した元世界記録保持者「まだまだ強くなれる」
◆競泳・パリ五輪代表選考会 第5日(21日、東京アクアティクスセンター) まばたきもせずに電光掲示板をにらんだ。待望の五輪切符を獲得しても、渡辺にこみ上げてきたのは悔しさだった。「自己ベスト(2分6秒67)は出せると思っていた」。派遣標準記録を突破する2分6秒94での1位も満足できなかった。 ■ファン「2分06秒台素晴らしすぎる」【動画】 前半から伸びやかなストロークで攻めた。終盤に差を詰められても冷静だった。ここまで積み上げてきた自分の泳ぎに自信があった。ゴール後は少し間を置き、安心感に包まれた。「多くの方に支えられた。本当にうれしい」と笑った。 東京五輪の代表落選後は左膝などの負傷が相次ぎ不振に陥った。「この先、水泳を続けるべきか…」と考え込んだ。一昨年から2012年ロンドン五輪200メートル平泳ぎで銅の立石諒を育てた高城直基コーチに師事し復調のきっかけをつかんだ。 193センチの長身で天性の水をつかむ能力を持つ。高城コーチは「200メートルの特化型。右に出る人がいない。世界でもトップクラス」と絶賛する。練習中に渡辺のマイナス思考が出ると、前向きな言葉で奮い立たせた。 技術面でも、大きな負荷がある低酸素プールなどで効率的な泳法を模索した。得意の伸びのある泳ぎが磨かれ、福岡で開催された昨年の世界選手権で代表復帰。「高城先生の下で最後の水泳人生を、と思っている」と語るほどの固い師弟の絆が道を切り開いた。 元世界記録保持者は8年ぶりの五輪で金を目指す。目標は5秒台。「まだまだ強くなれる」。挫折を乗り越えた復活ロードの終着は、パリでの頂点だ。(山田孝人)
西日本新聞社