立民、議席大幅増の勢いも多数派工作に高い壁 他党と「基本政策が異なる」
立憲民主党は、自民党の派閥パーティー収入不記載事件を受けた「政治とカネ」の問題を徹底的に追及し、公示前の議席から大幅に増やす見通しだ。目標に掲げた与党過半数割れに向け、攻防が続く。ただ、議席を増やしても立民だけで過半数を占めるのは難しいとみられ、主要野党への多数派工作が加速しそうだ。 立民の辻元清美代表代行は27日のNHK番組で、衆院選の手応えを問われ、「政権交代こそ最大の政治改革であり、政治改革なくして経済成長なしと訴えてきた。物価対策や経済対策の転換で戦ってきた。今まで以上に多くの皆さんに共感をいただいた実感がある」と述べた。 立民の野田佳彦代表は序盤から「政治とカネ」の問題に照準を絞った。自民を「裏金隠し解散だ」などと攻撃し、政権批判票の取り込みを図った。中盤では、政権担当能力を示す狙いから政策を強調する局面もあった。 だが、自民が非公認にした候補が代表を務める政党支部に活動費2千万円を支給した問題について、共産党の機関紙「しんぶん赤旗」が報じると、再び「政治とカネ」に振り切った。 立民幹部は「活動費2千万円問題で流れが一気に変わり、接戦区で競り勝った。街頭演説はそこまで盛り上がらなかったが、有権者は怒っていた。静かな反乱だ」と振り返る。選対関係者は「自民は『赤旗』に白旗を上げた」と喜んだ。 とはいえ、議席を増やしても立民単独で過半数は獲得できず、国会内で多数派を占めるには日本維新の会や国民民主党などとの連携が必須となりそうだ。別の立民幹部は「選挙が終わったばかりで、まだ先のことは考えられない」とうそぶくが、すでに各党への接触を始めている。 多数派工作では、単純な足し算は成り立たない。維新幹部は憲法改正に消極的な立民との国会での連携を「あり得ない」と一蹴する。一方、同じ旧民主党を源流とする国民民主も外交・安全保障、エネルギー政策で大きな隔たりがあり、国民民主幹部は「基本政策が異なる」と距離を置く構えだ。 立民と共産は今回の選挙でも限定的に協力したが、政権まで共にするのは難しい。参院でも過半数はないため、衆院での多数派工作が成功しても展望は開けない。
今後、立民は来夏の参院選と次期衆院選での政権奪取に向けた準備を進める方針だ。ただ、党内は憲法や皇室、外交・安全保障、エネルギーなどの国の基軸政策で振れ幅が大きく、旧民主党政権でも対立の火種となってきた。立民幹部は「正直、政策も含めて準備ができていない。本気で考えていかなければならない」と明かした。（千田恒弥）
