2023年を振り返って明らかになった瀬戸際な映画界
残っているのは、われわれ映画好きが、どこまで海外の映画に触れ続けられるのかという問題だが、日本公開が遅れに遅れた『オッペンハイマー』のような特例を除けば、メジャー作品については配信サービスが受け皿になるはずだ。映画館のスクリーンで観たいという欲求を満たされないのは残念だが、少なくとも作品を鑑賞することはできる。 もっと小規模な作品や非ハリウッドの外国映画については、ミニシアターの閉館が相次ぎ、経営の苦しさが叫ばれており、見通しは楽観的ではいられない。しかし22年ぶりに公開されてヒットしている『ゴーストワールド』のようなリバイバル上映が多かったこと、知られざる名監督の功績を掘り起こす特集企画が充実していたことは、2023年の喜ばしい一面ではある。少なくとも映画ファンは新旧問わずいい映画や、まだ出会っていない映画を観たい、知りたい、見せたい、という気持ちを失ってはいない。
2023年は、ソフトレンタルの牙城だったTSUTAYA渋谷店がついにレンタル事業を取りやめたことも象徴的だった。配信サービスがあればいいという向きもあるだろうが、ある日突然配信がなくなってしまうケースは数多い。洋画がすぐに映画館から消え去るわけではないにしても、大資本の支えのない作品は風前の灯であるという危機感は持っていた方がいい。 コロナ禍は間違いなく映画業界に打撃を与えたが、筆者は来るべき厳しい未来が近づいてくる時計の針を早めただけだと考えている。 とはいえ映画ファンひとりひとりができることには限界がある。深田晃司監督を筆頭に、もはや映画館や映画ファンの自助努力だけでは限界があることを認識し、公的支援を呼びかけている人たちの意見にも耳を傾けてほしい。ファンひとりひとりの草の根の努力はもちろん必要だが、業界全体、国全体としてひとつの文化を守れるかどうかの瀬戸際なのではないか。大げさに聞こえるのは承知の上で、待ったなしの状況がより明らかになった年だったと思っている。※参考/Box Office Mojo
文=村山章 text:Akira Murayama