「粉飾企業の倒産」が過去最多、さらなる増加が不可避なワケ
● 粉飾決算の発覚後に 追い込まれた「テクノクリエート」 仙台市に本社を置く中小ソフトウェア開発業者「テクノクリエート」も、粉飾決算の発覚後に倒産に追い込まれた1社だった。 同社は、1988年10月に半導体製造装置メーカーの子会社として設立され、94年に同メーカー系列から分離して現商号へ変更。電子回路の受託開発設計を主体に、試作品の製造や付帯する受託ソフトウェア開発を手がけていた。開発設計は通信伝送関連機器を中心に、画像関連機器やPC周辺機器向けのハードウェアなどを扱い、関東圏を中心とした国内全域を営業エリアに展開していた。 しかし、同業者との競合が厳しさを増していたなか、新型コロナ感染拡大の影響で年売上高は減少基調をたどり、収益が悪化。近時は得意先の設備投資抑制もあり、 2024年4月期の年収入高は約1億500万円にとどまり営業赤字を計上し、債務超過に陥っていた。 この間、コロナ関連融資を活用してしのぎ、事業の売却を検討していたものの簿外債務の発覚により頓挫。加えて、仕掛品や売掛金勘定の架空計上による粉飾決算が判明するなか、ここにきて資金繰りが限界に達し、9月4日に仙台地裁より破産手続き開始決定を受けた。
● 金利上昇局面で懸念される 粉飾発覚による倒産の増加 金融機関の間で、融資先の「バンクミーティング入り」に関する話題が飛び交っている。なかには、“世紀の大粉飾”として昨年話題を集めた「堀正工業」(2023年7月破産、東京)のように、多くの金融機関が粉飾決算を見抜けなかったケースも少なくない。 ここ数年の粉飾決算の特徴として、金融機関に借入金の返済猶予や追加支援を申し入れた際に発覚する事例が相次いでおり、粉飾期間の長期化や粉飾金額の大型化も進んでいる。今後の金利上昇局面では、借り換えの機会が増え、財務内容を金融機関に査定されるなかで粉飾決算が発覚して倒産に至るケースがさらに増加していきそうだ。 金融庁は8月30日、『2024事務年度の金融行政方針』を公表した。数ある方針の中で注目されるのが「事業者の持続的な成長を促す融資慣行の確立」の項目。事業の実態や事業から生み出される将来キャッシュ・フローといった事業性に着目した融資のあり方についてより一層の検討を行い、事業者の持続的な成長を促すという。 まさに「言うはやすく行うは難し」の典型だが、金融機関だけでなく一般の事業会社でも、いわゆる“目利き力”が厳しく問われる時代になる。 主要行など向けモニタリング方針の中で記載された「必要に応じて個別債務者の自己査定や償却・引当等の状況を確認する」との一文にも注目したい。 50前後の金融機関が欺かれた堀正工業の巨額粉飾事件のような、金融機関の信用リスク管理態勢に懸念を抱かせる案件が続くなかで、金融庁はサンプリングによる個別債権(融資先)の資産査定も辞さない姿勢を示した。 これにより、各金融機関がこれまで以上に企業を見る目が厳しくなるのは明らかだろう。「金利のある世界」が戻ってきたなかで、金融機関の選別からふるい落とされる企業が一定数出てくるに違いない。
内藤 修