U-23日本代表、誰が出ても“変わらない”という悩み。拮抗した試合だからあり得た負け方【西部の目/U-23アジアカップ】
U-23日本代表は22日、AFCアジアカップカタール2024・グループリーグB第3節でU-23韓国代表と対戦し、0-1で敗北した。この結果、日本はグループ2位通過となり、準々決勝では開催国カタールと激突することが決まった。まさに屈辱の敗北となったが、チームの編成上、あり得た負け方だったのかもしれない。(西部謙司) 【動画】U-23日本代表対U-23韓国代表 ハイライト
●文字通りの総力戦に 中2日で行われたグループリーグの最終戦、U-23日本代表とU-23韓国代表はどちらもグループ突破が決まっていた。1位か2位かで次の対戦相手が変わってくるとはいえ、どちらもあまり無理はしたくない。負傷者は出したくないし疲労もなるべく残したくない。 どちらも先発の入れ替えがあり、U-23日本代表は3試合で23人中22人が出場することになった。厳しい日程のこの大会では文字どおりの総力戦にならざるをえず、選手層の厚さと誰が出ても一定水準のプレーを維持できるかどうかは重要なポイントになる。その点で、今回のチームはまさにそのように仕上がっている。 メンバーの入れ替えはあるものの、機能性は変わらない。守備では4-4-2、内野航太郎と荒木遼太郎が2トップの形。攻撃ではトップ下として荒木が下り、ボランチの1人が荒木と並ぶ形でハーフスペースを分担する。この試合では川﨑颯太がアンカーとして残り、田中聡がインサイドハーフに上がる形だった。このシステム運用は選手が代わっても同じで、A代表とも同じである。 対するU-23韓国代表は5-4-1の形で守備ブロックを形成。がっちりと守りながらカウンターを狙う姿勢をとった。序盤はU-23日本代表が攻め込み、左サイドの平河悠がチャンスを作る。右足アウトでの深くて速い切り返し、素早いステップワークと攻守にアフレッシブなプレーで相手に脅威を与えていた。 3分には左から縦に突破してゴールラインまで食い込んでプルバック、19分にはカットインからシュート。前半をやや優勢で折り返す。 ●数多くのチャンスを決めきれず 後半からU-23韓国代表の球際が激しくなった。ぎりぎりのタイミングで足を出すのでファウルが増える。無理はしたくないが負けるわけにもいかない。韓国はギアを上げてきた。 63分、U-23日本代表は3人を交代。田中、平河、川﨑に代わって藤田譲瑠チマ、佐藤恵允、松木玖生が入った。3人が代わってもチームの機能性は同じ、プレーの水準も変わらない。これは長所であり短所でもあるのだが、この大会に関しては明らかにメリットがある。 後半は相手に盛り返されていたが、交代後は松木のボール奪取からのスルーパス、松木のクロスボールから高井幸大のヘディングと2つのチャンスを作る。しかし、75分にCKからU-23韓国代表がヘディングシュートを決めて先制。一進一退の攻防の中、セットプレーから先手をとられた。 失点直後に内野航に代えて細谷真大、荒木に代えて山本理仁を送る。そこからは猛攻が続いた。5つの決定機を作っている。しかし、シュートは相手DFの懸命のブロックに防がれ、あるいはシュートが枠を外れて得点を奪えなかった。 試合を通して数多くのチャンスがありながら決めきれなかったのは反省材料だが、U-23韓国代表と決定力に差があったわけではない。ただ、今大会のチームにありうる負け方だったとも言えるかもしれない。 ●なぜありえた負け方だったのか U-23日本代表は選手層が厚い。そしてチームとしての機能性は一貫していて、誰が出ても役割は踏襲されている。過密日程でも一定の水準を保つことができて、しかも選手の力量に大きな差がないので統一感が崩れない。この大会を戦ううえで非常に有利なチームとなっている。 一方で、あえて弱点に言及すると一定以上の力は出にくい。飛びぬけた存在がいないからだ。誰が出ても総力と機能性が変わらないということは、逆に言えば1人のために全体の構成を組み替えるほどのエースがいないことを意味する。 アルゼンチン代表にリオネル・メッシがいるかいないか、フランス代表にキリアン・エンバペがいるかどうかで、どちらも違うチームになる。この2人は極端な例だが、U-23日本代表にそうした例外的な選手はいない。 ただ、それがデメリットかというと、むしろメリットだと思う。全員の力が均衡しているとプレーのタイミングを合わせやすく、チームとしてまとまるからだ。あまりにも特別な選手がいると、その選手だけが浮き上がってしまい、合わせようとするとミスが出やすくなる。抜きんでた選手が他に合わせてレベルを下げると、それはそれで意味がない。 とはいえ、実力が均衡している相手と対戦した場合、一定水準のプレーはできるけれども絶対的な切り札を欠くので、運がなければ接戦を落とすこともありうる。この試合で切り札的存在だった平河を途中で交代させた影響もあったかもしれない。もちろん、より重要な次戦以降を考えての交代なので采配ミスではない。 今大会については合理的な編成になっている。パリ五輪の出場を決めた後におそらく合流する欧州でプレーする選手たちが加わったときにどうなるかは今後の課題だ。より強力な選手が加わることで生じるギャップによって総力が下がるか、短期間にそれを埋めてチームが進化するか。当然、その前に出場権を獲得しなければならない。次戦の相手は開催国のU-23カタール代表。ここから真価を問われる試合の連続になる。 (文:西部謙司)
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