外国人旅行者が増えるなか 「日本の美しさをどう守るか」が今後の課題
「日本の街の美しさ」と多くの外国人とのバランスをどうするか
佐々木)歴史的にも幕末から明治にかけて、欧米人がたくさん日本にやって来ました。歴史学者の渡辺京二さんが当時の文献をまとめていますが、多くの外国人が日本に来て「何て綺麗なんだ!」と驚いたそうです。町にゴミ1つ落ちていない。例えば、欧米から来たある植物学者が雑草研究のため、田んぼのあぜ道の雑草を採取しようとしたら、あぜ道に雑草が1本もない。すべて抜かれており、見事なぐらい清潔で美しい町だったそうです。 飯田)そうなのですよね。 佐々木)19世紀当時は、世界中どこでもだいたい汚かったわけで、「日本の美しさは群を抜いていた」という話もあります。そういうDNAが我々の民族にはあるのです。これはこれで、世界に対する日本の1つの売りではありますが、それが逆に我々にとって息苦しくもあり、個人的には「ちょっと面倒だな」と思わなくもない。しかし、一方で外国人がたくさん入ってくると、その売りが崩れてしまう。「そのバランスを今後どうするのか」は重要な問題だと思います。
ゴミ箱がないのに道にゴミが落ちていない
飯田)富士山なども、入山規制しないと人が増えてしまうし、ゴミも大変なことになる。 佐々木)日本はゴミ箱が少ないですよね。 飯田)地下鉄サリン事件以降、駅からゴミ箱がどんどん撤去された。 佐々木)東京メトロも少し前までゴミ箱があったのに、突然なくなりました。 飯田)この時期、花粉症でティッシュを多く使うのですが、ゴミ箱がありません。 佐々木)でも、ゴミ箱がないのに道にゴミが落ちていないのは、外国人から見ると驚天動地だと思います。それらも今後、外国人が増えてきたらどうするのか。「ゴミは家に持ち帰りましょう」と言うのか……。以前、サウジアラビアのテレビ局が「ゴミが落ちていない」という内容で日本を取材したのが話題になっていました。
外国人観光客が増えるなかで「美しい日本」をどう守るかは今後の重要な課題
佐々木)公園でベンチに座り、お菓子を食べているカップルを後ろから隠し撮りして、「いまポテトチップスが地面に落ちましたが、拾っています!」と実況するのですよ。それがニュースになっている。 飯田)そういう感覚は他の国にはないのかも知れませんね。 佐々木)日本人の生活文化の高さは、外国人にとって驚きらしいのですが、外国人観光客が増えるなか、美しい日本をどう守り見せていくかは観光庁などが取り組まなければいけない問題だと思います。