「幕が開く前の客席が怖いくらい静かだった」三ツ矢雄二(69)が振り返る“テニミュ”第1回公演の恐怖体験 「ファンの女の子たちが『私たちの愛するテニプリ』をどんな舞台に、って…」
〈「グレーゾーンと言えば察してくれると思った」三ツ矢雄二(69)が語った“意図せぬカミングアウト”の効果と“30年前の大失恋”〉 から続く 【秘蔵写真】「僕は若い頃、美少年だったんです」ナイーブな表情を見せる26歳の三ツ矢さん 『タッチ』の上杉達也など多くの役を演じてきた声優の三ツ矢雄二さん(69)は、自分のことを「何でも屋です」と表現する。 『テニスの王子様』『マッシュル-MASHLE-』など、三ツ矢さんが2.5次元舞台に作詞した数は1000曲近い。また、日本初のBLボイスドラマといわれる『鼓ヶ淵』の脚本・主演も務めるなど、一大カルチャーに育ったジャンルの“親”ともいえる存在だ。 ゲイというセクシュアリティと仕事の関係、そして1980~90年代エンタメ界の作り手としての思いを聞いた。(全3本の2本目/ 3本目を読む ) ◆◆◆ ――三ツ矢さんは1980年代に『タッチ』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズなど声優として大活躍しましたが、中でも異色なのが、超売れっ子だった30代に『鼓ヶ淵』という〈耳で聴くBL〉に出演したことです。この『鼓ヶ淵』がBLボイスドラマの元祖というのは、本当ですか?
「はい、日本初の〈聴くBL〉をつくったのは僕です」
三ツ矢雄二さん(以下、三ツ矢) はい、日本初の〈聴くBL〉をつくったのは僕です。当時、『JUNE(ジュネ)』という女性向けの男性同性愛専門誌があったんですよ。まだBLという言葉はなく「やおい」や「お耽美」と言われていて、若かった頃の僕は美少年で売っていたので(笑)、『JUNE』から取材依頼が来たんです。 ――今もですが、当時の三ツ矢さんはすごくナイーブな美少年という雰囲気です。 三ツ矢 その『JUNE』の取材中、編集長の佐川俊彦さんから「こんな小説が出るから読んでみて」と渡されたのが、『鼓ヶ淵』の原作でした。彼が「今度これを音声ドラマにしたいんだ」と言うので「面白いですね」と答えたら、「三ツ矢さんにぜひ、脚本を書いてほしい」と頼まれて。 で、脚本を書いたら、今度は「声優として出演してほしい」と頼まれて「わかりました、やります」と。それが、音声をカセットテープに録音した〈カセットJUNE〉というシリーズです。ドラマCDや配信ボイスドラマの元祖ですね。 ――『鼓ヶ淵』で、三ツ矢さんの相手役は鈴置洋孝さん(声優。代表作に『機動戦士ガンダム』のブライト・ノア役など。2006年没)ですが、お2人とも当時すでに大人気声優ですよね。その2人が同性愛作品の声をあてるというのは、声優ファンも騒然となったのでは。 三ツ矢 鈴置さんをキャスティングしたのは製作会社ですが、とても画期的だったと思います。僕から彼に直接「今度『鼓ヶ淵』に出てよ」とお願いして、「わかった」というやりとりもあったので、彼はオファーを受けてくれたのかもしれません。