<インド>スマホを持った僧侶たち ── 高橋邦典フォト・ジャーナル
仏教の聖地であるから、様々な国から仏教僧たちがこの地を訪れる。マハボディ寺は勿論のこと、仏陀ゆかりの各所には必ずといっていいほど、チベットやタイをはじめとした外国僧たちの姿がある。ブッダガヤに長期間滞在して修行に励む僧たちもいるが、観光気分の坊さん達も少なくない。仏像や遺跡の前での記念撮影や、土産物を物色したりと、やることは普通の観光客とたいして変わらないのだ。
前正覚山と呼ばれる山に、仏陀が断食しながら苦行した洞窟がある。観光スポットの一つとなっているここを訪れた時のことだ。暗い洞穴のなかで写真を撮っていると、二人の僧がはいってきた。みたところミャンマー人だろう。彼らは仏像へ祈りもそこそこに、早速記念写真を撮り始めた。さすがは現代の僧、機材はスマホにタブレットである。そこまでなら最近よく見かける光景だが、ロウソクしか光のない洞窟内ではうまく写らないと察した彼らは、一人がスマホのフラッシュライトで仏像を照らし、もう一人がそれを撮影するという頭の使いようを見せてくれた。 熱心に写真を撮り続ける彼らの姿は、袈裟を着た僧のイメージには幾分そぐわなかったが、機転の利いたこの撮影チームワークに、僕は思わず微笑んだ。 (2014年11月) ---------------- 高橋邦典 フォトジャーナリスト 宮城県仙台市生まれ。1990年に渡米。米新聞社でフォトグラファーとして勤務後、2009年よりフリーランスとしてインドに拠点を移す。アフガニスタン、イラク、リベリア、リビアなどの紛争地を取材。著書に「ぼくの見た戦争_2003年イラク」、「『あの日』のこと」(いずれもポプラ社)、「フレームズ・オブ・ライフ」(長崎出版)などがある。ワールド・プレス・フォト、POYiをはじめとして、受賞多数。 Copyright (C) Kuni Takahashi. All Rights Reserved.