希少なヤマブドウ使った伝統のワイン JA庄内たがわ、味も歴史も深い特産品
山形県のJA庄内たがわ月山ワイン山ぶどう研究所は、全国でも珍しいJAが運営するワイナリー。地元産の醸造用ブドウ100%を原料にした月山ワインは、JA特産品の一つで人気商品だ。月山ワイン誕生のルーツとなるヤマブドウの生産と伝統的なワイン造りを守り続けている。
全国的に生産量が少ないヤマブドウだが、同研究所がある鶴岡市朝日地域では盛んに栽培される。1975年ごろ、自生したヤマブドウの加工品「山ぶどう原液」の販売に乗り出し、好評だったことから79年にワイン造りが始まった。 ワイン産地を支えるのは原料を生産するJA山ぶどう部会だ。現在ヤマブドウの他、欧州系のブドウ品種も生産。約30ヘクタールの農地を部会員約60人が守る。伊藤由紀子会長は「代々続いてきた栽培技術レベルを落とさず、品質を向上させ、未来に残していきたい。月山ワインには、担い手を育てるためにも生産者の所得向上につながるような存在になってほしい」と期待を寄せる。 同地域は、山形内陸と庄内地方を大きく分ける月山からなる水と豊かな自然が特徴だ。部会員らの丁寧な栽培管理が高品質生産につながっている。 ワインの品質と味を守るのが旧国道トンネルを利用した貯蔵庫。内部の気温は、年間を通じて18度以下とワインの貯蔵に最適な環境になっている。ジュースとなる果汁は、雪の冷気を利用した雪室と呼ばれる貯蔵庫に保管し、豪雪地帯の特色を生かしている。 同研究所は、例年行われるワインコンクールへの出品や、JA全農の新ブランド「ニッポンエール」と連携した商品販売など、全国拡大に向けPRしている。7月には、ヤマブドウに特化した「第1回日本山ぶどうワインコンクール」に出品。赤ワイン部門で「月山ワイン山ぶどう酒」が空賞(銀賞)を受賞した。 ニッポンエールコラボ商品としては、赤・白ワイン「月のささやき」を3月から全国のAコープで販売をしている。 同研究所では現在、22年に入所した若手職員2人が日々ワイン造りに励んでいる。山口幸希さん(28)と板垣玲祐さん(27)は、醸造だけではなく実際に農地へ赴き栽培方法を学ぶ。ヤマブドウをはじめとする醸造用ブドウの栽培から醸造まで幅広く知識を深めている。2人は「ワイン造りを守りながらその知識を活用し、新商品開発へ挑戦していきたい」と意気込む。
日本農業新聞