50歳の専業主婦です。夫が「子どもが独立したし、遺族年金もあるから」と、生命保険を解約しようとしています。年収500万円で貯金も「500万円」ですが、本当に大丈夫なのでしょうか…?
夫が亡くなった後、必要となる生活費は?
一方、夫が亡くなった後で必要な生活費はどの程度でしょうか。単身であるため、50歳から65歳までは総務省統計局の家計調査年報にある単身世帯(平均年齢58.2歳)消費支出の月平均16万7620円を採用します。 また、65歳以降も同年報の、65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)消費支出の月平均14万5430円で計算します。なお、女性の平均寿命は87.14歳であることから90歳まで存命すると想定します。 この前提で計算すると必要な生活費は次のとおりです。 ・50歳から65歳までの15年間 16万7620円×12ヶ月×15年間=3017万1600円 ・65歳から90歳までの25年間 14万5430円×12ヶ月×25年間=4362万9000円 ・50歳から90歳までの40年間合計 3017万1600円+4362万9000円=7380万600円 あまりぜいたくをせず平均的な暮らしをしたとしても、生活費だけで7000万円を超える金額となり、税金や介護費用なども考えれば、8000万円程度は必要と考えられます。なお、ここでの消費支出の月平均は、持ち家の場合も含んでいるため、賃貸物件に住んでいる場合は、さらに支出が増える可能性があります。
90歳までの生活費収支はどうなる?
遺族年金などから年金受給総額を計算すると、次のとおりです。 ・50歳から65歳まで 132万9000円×15年間=1993万5000円 ・65歳から90歳まで 153万3000円×25年間=3832万5000円 ・50歳から90歳までの40年間の年金額合計 1993万5000円+3832万5000円=5826万円 90歳までに必要と想定した約8000万円と年金受給総額5826万円との差額は「8000万円-5826万円=2174万円」になります。つまり、夫が亡くなった時点で500万円しか貯金がないと、仮に退職金が1000万円あったとしても「2174万円-500万円-1000万円=674万円」となり、90歳まで生きると700万円程度不足します。 この結果から考えると、50歳だった妻が遺族年金や老齢基礎年金だけで生活するのは難しいかもしれません。 さらに、7月には「遺族厚生年金の受給を5年間に見直す」という方針が示されました。そのため、今後はその可能性も考慮する必要があるでしょう。 しかし、年金以外の収入が少しでもあれば、生活費の収支は一気に好転します。例えば、パートで月5万円収入を得られれば、50歳から65歳までの15年間で5万円×12ヶ月×15年間=900万円となり、700万程度の不足は補えます。さらに老齢基礎年金の繰下げ受給で、年金額を増やし長生きリスクに備えることも可能です。
まとめ
シミュレーション結果で見れば、50歳の専業主婦が夫を亡くした場合、生命保険など一定の備えは必要です。しかし、少しでも収入を得るなど遺族年金以外の対策でも、生活費の収支は改善できます。まずは、夫が亡くなった際にもらえる遺族年金を把握し、それ以外の対策も考えながら、必要な備えを検討してみてはいかがでしょうか。 出典 日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額) 日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額) 総務省統計局 家計調査報告 家計収支編 2023年(令和5年)平均結果の概要 執筆者:松尾知真 FP2級
ファイナンシャルフィールド編集部